イノベーション人材と行動観察

皆さんはiPhone派ですか？それとAndroid派？それとも...。スターバックスや社内で自分と同じ着信音に驚いた経験をされた方は多いと思います。ガラケー（フューチャーフォン）の時代には皆がこぞってダウンロードした音源を着信音にしていましたが、今や初期設定のままの方が多いのではないでしょうか？スマホでも着信音は変更できるのになぜでしょう。その理由に、豊富なアプリの存在があると言われています。今やスマホ利用者の最大の関心事は「電話」ではなく「LINE」「Instagram」「地図」「ツムツム」などの非電話系アプリ。私も仕事以外で電話はほとんど使っていません。このアプリ世界、一体誰が予想できたでしょうか？

初代iPhoneが2007年に登場する前の2005年頃、ある携帯電話会社が顧客を対象に大規模なアンケートを実施していました。その中で最も利用者に期待されていた次世代携帯電話の機能トップ3はなんと...

ワンセグ
おサイフケータイ
インターネット

ちなみに最下位に輝いたのは「豊富なアプリ機能」今や我々は、アプリしか使っていません。利用者というものは利用している商品・サービスの延長線上の回答しかできないという典型的な例です。ではどうすれば良いのか？その答えは文化人類学にあると考えられています。彼らは「未知の部族」に遭遇した場合に、今の生活に満足していますか？今後どうしたいですか？などのアンケート調査を行いません。文化人類学者は徹底的に、その部族の行動を観察するのです。

この手法はビジネスの現場でも活用可能で、人の行動を詳細に観察することで、消費者自身も言葉にできないニーズの発見が可能となるため、消費者や従業員の理解に役立てて、ヒット商品の開発に役立てようとする取り組みが企業内でも活発に行われています。もちろんMBA教育でも「行動観察（フィールド）」はイノベーション人材の育成に欠かせない存在ですので、積極的に取り入れられています。

Written by

栗本博行

神戸大学経営学部卒業後、大阪大学経済学研究科にて修士/博士（経済学）を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし、規格競争分析に関する論文を多領域に亘って執筆。近年は事業継承に関する研究に取り組む（事業承継学会理事）。ビジネススクールではEMBA/MBAプログラムの立ち上げから運営まで幅広く携わる。