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《連載コラム》部長を辞めて教授になったMBA⑫:師との出会い

人生を変える先生
Dr. Andrew Crouchとの最初の出会いは、必修科目で彼の「Strategic Management」の授業を受けた時でした。この授業のメインは歴史上の有名な戦略家、クラウゼビッツや孫子の戦争における戦略を分析し、そこから得た示唆を実際のビジネスの戦略に適応発展させるものでした。私は、Professor Crouchの講義内容やプレゼンテーションスタイルにすっかり魅せられてしまったのです。それまで大学や会社の研修などで様々なプレゼンテーションを観てはきていましたが、彼のようなスタイルで物事(特に企業戦略)を考えさせられることは無かったため、強く印象に残ったのかも知れません。彼は授業の中で、学生に答えを直接伝えることはほとんどありませんでした。その代わりに、imply(暗示)させるのです。

戦略とは四葉のクローバー
Professor Crouchは初回の授業で、「質の高い戦略とは何か」について説明しました。黒板に四葉(よつば)のクローバーの葉っぱの一枚だけの絵を描き、グレードC(good)と言いました。次にその一枚の葉っぱに残り三枚の葉っぱを中心で接するように描き、グレードB(excellent)だと言いました。そして、最後に四枚の葉っぱ全体に立体的な厚みや影を書き足して、グレードA(outstanding)だと言いました。これを見て、私は「戦略はアート(芸術作品)だ」と感じました。当時学生であった私には、目から鱗的なインパクトを感じたのを覚えています。

Professor Crouchの教え方は機知に富んでいました。ある講義では、桐の箱のようなものから、ビロード布に包まれたペルシャ風の模様が描かれた一枚の陶器を、白い手袋をした手で大事そうに取り出し、学生に「いくらだと思いますか?」と尋ねます。「200ドル(約1万6千円)」、「300ドル(約2万4千円)」、、、「1000ドル(約8万円)」学生たちが当てずっぽうに答えます。一呼吸おいてProfessor Crouchが、近所のスーパーマーケットのウォルマートで買った6ドル(約480円)の食器皿だと明かすと、クラスはワッと笑いに包まれます。演出によって、顧客が心の中に想定する価格はいかようにもコントロールできる。顧客の求めているものは製品の機能そのものだけではなく、それが醸し出す全ての価値であることを分からせたかったのでしょう。

企業の経営幹部研修でのブレックファスト・プレゼンテーション
また、企業の経営幹部に対する研修もProfessor Crouchの得意とする分野でした。ゴールドコーストのホテルで、朝食を食べながら社内研修の前に、Professor Crouchのプレゼンテーションを40分程度聞くというものでした。当時学生であった私は、そのプレゼンテーションに参加費を払ってBHP(豪州最大の鉄鋼会社)の各地オフィスから参集した経営幹部に交じって参加したりしました。

特にProfessor Crouchの専門が管理者の意思決定の心理的プロセスだったので、その日のお題は戦場における戦闘の描写と、それにかかわる戦闘員の心理的な変化の要因に焦点をあてたものでした。歴史上の転換期となった実際の戦場の敵味方双方の陣取りを映し出し、指揮官や現場の将校の心理側面を憶測し、少ない軍勢でも組織としての勢い(モーメンタム)を引き出すことで、有利に戦いを進められる状況があることをimplyされました。NHKの真田丸風に言えば、関ヶ原の戦いにおける豊臣軍の敗北は、徳川方の寝返りの根回しによるものです。誰もが勝ち組に付きたいと考えるなかで、敵の大名の心理を巧みに翻弄し味方にする策の重要性を視聴者に暗に気づかせるようなものに似ています。

このような追っかけのようなことをしているうちに、Professor Crouchのような先生に自分もなりたいという夢を勝手に膨らませていく私は、先生のオフィスに相談に行くことを決意します。続きは次回のコラムにて。To be continued. Stay Tuned…皆様、良いお年をお迎えください。

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