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オンライン授業《税理士養成課程》Business analysis 小林伸行教授

#ビジネススクール #税理士 #経営分析 #税法 #会計 #小林伸行

東京校 会計ファイナンス コースで、修士論文執筆のためのセミナー指導も行ってくださっている小林伸行教授の「Business Analysis」が、東京校スタジオを用いて、オンラインにて開講されました。


授業風景

授業概要


本授業は、税理士養成課程である会計ファイナンス研究科の科目で、税理士もしくは企業の最高財務責任者を目指す受講生に向けて開講されています。よって、企業の経営分析の考え方やその前提となる知識について理解し、企業分析を「実践」することを目的としています。


「日立製作所 2009」のケースで【企業価値を考える上で必要なファイナンス的な視点を理解し、それを用いて企業分析を行う意義】を学ぶ


小林伸行先生

2007年3月期から2期連続で赤字を計上していた株式会社日立製作所(以下、「日立」)は、2009年1月から3月期の業績見通しとして過去に例を見ない赤字の計上が見込まれていました。

こうした中、日立の上場子会社である日立プラントテクノロジー及び日立マクセル株式会社の会長職に就いていた川村隆が、取締役会における決議を経て、2009年4月1日付けで日立の代表執行役会長兼執行役社長に就任しました。

川村隆による変革の第一に実行されたのは、上場子会社5社をTOB(株式公開買付け)により完全子会社化すること。これが今回のBusiness Analysisで扱われる日立製作所のケース概要です。

小林伸行教授からの最初の問いかけは「日立はなぜ、増資をしてまで借り入れを行なったのか」です。

既に、前週の2日間で受講生は、テキストやある食品製造企業のケースを用いてディスカッションし、財務諸表を利用して企業分析を行う手法やよく用いられる指標、財務諸表が作成されている環境やその特質について習得済です。

受講生は、税引後営業利益を投下資本で割ることで求められる指標であるROIC(投下資本比率)を分析することで、事業活動のために投資したお金を使って、企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかが理解できるようになっています。よって、営業利益をそのままに投下資本を減らすことができればROICが上がり、企業の安定性が高まることを知っており、このセオリーを用いながらディスカッションが進んでいきます。

しかし、小林伸行教授は受講生にさらに問いかけます。

「ビジネスをダイナミズムに捉えていますか。」
「長期的視点に立って検討していますか。」

WACC(Weighted Average Cost of Capital)のみを分析し、どこから資金調達を行うべきか、あるいはROICをどのように分配すべきかについて着目してディスカッションを行っていた受講生たちは、小林伸行教授のファシリテートによって、“企業経営者が真に求められているものは何か“という事を意識し始めます。

確かに、投下資本を減らすと、短期的にはROICが増加します。しかし、長期的視点を用いると、それは未来の営業利益を減らすことに繋がりかねません。ですから、経営者は、単にコスト削減など投下資本を減らすことのみに注力するのではなく、営業利益につながるような投下資本を行っていくことが求められているとわかるのです。経営者は、調達コストよりも運用利回りを大きくすること、すなわち、経営者はWACC以上のROICをあげることを目指して行かねばならないことを、受講生は理解できるようになっていきました。

最後に、小林伸行教授は、「このケースディスカッションを通じて、WACCとROICは別々に分析するのではなく、両者は全体的に同時決定されていることを理解し、実践に役立てて欲しいです。」と締めくくられ、受講生は、理論を学ぶこととその実践の意義について、これまで以上に深く修得しているようでした。

小林伸行教授プロフィール

公認会計士・税理士ヒューリック株式会社監査役。
慶應義塾大学卒業後、大手監査法人にて会計監査業務に従事。監査法人から独立後、公認会計士・税理士業務を行いながら、慶應義塾大学大学院商学研究科大学院後期博士課程まで進学し、実務と研究の双方にまたがって横断的に活動している。
所属学会は、日本経営分析学会日本会計研究学会日本簿記学会日本ディスクロージャー研究学会プロネクサス総合研究所ディスクロージャー基本問題研究会委員。
主な著書として、『複式簿記 根本原則の研究』白桃書房、2007年、共著『企業価値と会計・監査』税務研究会、2007年、共著『退職給付会計の実務』東洋経済新報社、1999年、共著 他多数。