長澤かおりさん
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《最強の環境で、最高の出会いがあります。》 長年、商品開発に携わってきた私の入学の目的は、現業のアウトプットの質を高め、自分自身の揺るがない軸を確立するためでした。ビジネスに必要な思考、知識、言語化...
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マネジメント研究科教授 岩澤誠一郎 先生
行動経済学を専門とされている岩澤先生は、野村総合研究所および野村證券で、アナリスト、ストラテジストとして活躍された実務家教員です。軽快なトークで学生からも人気がある岩澤先生に「議論を面白くするもの」についてお話を伺いました。
取材:2015年9月
語り手:岩澤誠一郎
取材・構成:名古屋商科大学ビジネススクール広報
岩澤先生: これはワーク・エンゲイジメントというテーマなんです。ワーク・エンゲイジメントとは何なのかということですが、エンゲイジメントというのは心や体をそのために使っている状態のことで、例えば今あなたが上の空だったら、この会話にエンゲイジしていない状態。だけど私の話に引き込まれていたらエンゲイジしている状態ということです。
仕事において自分で振り返ってみても、熱心に取り組んでいる時とそうでない時とあるじゃないですか。自分の日常を振り返って、熱心であることが多いという人はワーク・エンゲイジメントの高い人ということになります。実はこれ、行動経済学の授業の4日目(最終日)の題材なんです。ワーク・エンゲイジメントを取っ掛かりとしてみんなでディスカッションをしてもらいます。例えば、いろんな調査のデータが示していることなのですが、日本の企業における従業員のワーク・エンゲイジメントを、世界各国の企業と比べると、日本の企業は世界最低の部類なんですよ。
岩澤先生: はい、そう思われてますよね。しかしここで注意しなくてはいけないのは、勤勉とエンゲージメントっていうのは、多少違う概念だってことなんですよ。勤勉っていうのは、体は一生懸命使って酷使してるんだけど、心は動いていないかもしれない。それに対して自分が心の底から楽しんで仕事をやっているというのがワーク・エンゲイジメントなんです。そういう観点からすると、日本人のワーク・エンゲイジメントは世界最低水準なんですよ。「仕事の満足度」という尺度を使って調査をしても同じ結果が出ます。日本人は仕事が何となく不満だと思ってもね、この職業就いちゃったからしょうがない、と一生懸命やるんですよ。
岩澤先生: 国民性みたいなものもある。ただそれだけではないのも明らかです。例えば名古屋商科大学のビジネススクールに来る人は、実はワーク・エンゲイジメントが高い人が多いんです。ただ面白いことに、統計をとってみると、一つのクラスの中で山が2つできます。クラスの半分ぐらいは、仕事をしていて楽しくてしょうがないっていうんですよ。一方もう半分くらいの塊は、自分のキャリアや仕事に少し行き詰っていて、だから人生変えたいからということでビジネススクールに来るって人-この人たちがもう一つの塊なんです。
それでね、この二つのグループの人たちがまた実にいいディスカッションをしてくれるんですよ。授業では一通りクラス全体での討議を終えた後で、グループに分かれて、各自のワーク・エンゲイジメントを高めるためにどうすれば良いのか、そしてあなたが上司だとしたら、部下のワークエンゲージメントを高めるために何ができるかを話し合ってもらって、発表してもらうんですが、これをやると、4日目は大変盛り上がる。みんな非常に良い雰囲気になってね。そして私はそこで受講生を良くリサーチして(笑)、その結果を論文書くのに使ってるんです。
岩澤先生: そういう意味だと私の発想は違いますね。あんなに素晴らしい受講生、現実の社会の中で格闘している人たちがいろいろと自分の経験や考えを披露してくれる、その授業の時間は自分にとってとても貴重なフィールド・サーベイの機会であって、こんな機会を与えられてありがたいという気持ちをすごく持っている。だから授業のとき、学生たちが学ぶことになってるんだけど、私も熱心に見てるんだよね、学生を。熱心に見ようとしているっていうのかな、そういう感じはあるね。
岩澤先生: ビジネススクールだからね。長沢先生がいつもおっしゃっておられるのは、ビジネススクールのクラスでは教師が教えちゃ駄目なんだと。私の場合は長沢先生ほどに悟りは開けないのだけど、それでもなるべくディスカッションに時間を取るようにはしてるんです。そうすると考えなくてはいけないのが、どのようにデイスカッションをファシリテイトするのかということでね。話の持っていきかたはよく考えないと。ここでこのような質問をとか、ここでこれを挟むとかね。そう言った点は授業の前に良く考えるようにしています。
シミュレーションしてから講義に臨むんですか?
岩澤先生: そうですね。まあもっとも、想定もしていなかった方向に議論が展開することも少なくなくてね。それでその方が面白かったりするんですけれど。私もいくつか講義を持ってるんですけど、日本人の講義で言うと、論理的思考力を養うEMBAの講義での「行動経済学」と、新たな価値を生み出すMBAの講義「エコノミー・イン・エマージング・マーケッツ(新興国市場の経済とビジネス)」を担当しています。これも授業やっていてとても面白いんですよ。
エコノミー・イン・エマージング・マーケッツという授業のテーマの一つは、リバース・イノーベーションという話です。リバース・イノベーションってのは何かと言うと、イノーベションというと、先進国で技術を開発して、それを新興国にも持って行くというイメージなんですが、実際には新興国のマーケットに持っていったら、先進国で開発した技術が全然通用しなかったりする。それで新興国発の根本的なイノベーションが必要だったりするんですが、そうして開発したものが今度は先進国に逆流してくることがある、というのがリバース・イノベーションなんですね。それでリバース・イノベーションのケースを8つ学ぶんですが、そのうちに、これも化学反応みたいなものなんですけど、途中からみなさんの理解の次元が、何段階も上がって行くんです。
どういう風に上がっていくかというと「リバース・イノベーションって、新興国発のイノベーションというけど、新興国じゃなくてもいいのでは、日本国内の地方発でもいいじゃないか」とか、「例えばスポーツ部で、部員のマジョリティがスポーツの有名高校から来た選手だったとする、そこに弱小高校から来た選手がいたとする。その選手を育てないと勝てないという時に、この選手を育てるにはどうしたら良いかという問題と、リバース・イノベーションの問題が関連してきますよね」とか、そういう話に繋がっていく。最終的に企業経営の話も超えて人生にいろいろと応用できる話じゃないかというように、みんなの理解がだんだん上がっていくんです。
それでその触媒になるのが、リバース・イノベーションについてのプレゼンテーションなんです。一人一人全員に、このケースを読んで、リバース・イノベーションという言葉で思いつく自分の事例について何でもいいから発表してもらう。そしたら、みんないろんなことを言い出すんですよ。それに触発されて、ああそういう風に考えればいいのかと考え方が刺激されてね。それでもう玉突き状態で、いろんなアイデアがぽんぽん出てくるわけ。この変貌ぶりというのはね、見てて楽しいですよ。みんなが刺激されて、好きなこと言ってくれてホント楽しいんだよ。更によく考えたら、自分のやっている研究の根本的なテーマとも、すごく関わって繋がっているんです。例えばワーク・エンゲイジメントの話なんかとも深い次元で関係していると思うし。何というか、教室の中でみなさんが楽しんで授業やってるのを見ていると、こちらも刺激を受けるし、見てるだけで幸せな気分ですね。
岩澤先生: ポイントは何かと言うと、学生が何を言っても、ポジティブな雰囲気で反応することなんですよ。それはそんな難しいことじゃない。たとえちょっと変な意見だなと思ったとしても「面白いね」っていうんですよ。
岩澤先生: いいよ、本当に面白い時も「面白い!」っていうからね。教員は教えるにあたって、みんなから意見を引き出しながら、議論の場をどうするために、どのようなファシリテートをするかについて、やっぱり頭をよく使って、考えて授業に臨まなくてはいけないと思う。その上で、考えても望むようにいかないから、とっさの勘も必要なんですが、その反応の仕方一つ一つを大事にしなくては。一つ大事なのは、汚れた心を持って教室にいかないことなんですよ。汚れた心で教室に行っていると、どうしても性格の悪さが生徒たちに見えちゃう。それは確実に教室の雰囲気を悪くするよ。だから授業に臨む前は名古屋城や東京駅を見て深呼吸でもして(笑)、心を多少浄化してから臨むんですよ。それはとっても大事なことなんです。