MBAとは何か
ケースメソッド《Case Method》とは「ハーバード白熱教室」で日本でも一躍有名になった教育手法です。ケースメソッドでは講師と受講生が対話を進めながら進行する手法で(教育手法としては「ケースメソッド」という呼び名が正式名称ですがつい「ケーススタディ」と言ってしまいます...)世界中のMBA教育で全面的に取り入れられています。国内でも多くのビジネススクールがこの教育手法を採用し、国内では高木晴夫教授や竹内伸一教授がケースメソッドの第一人者と考えられています。
MBA教育で実践されているケースメソッドとは、実際のビジネスで主人公(ケース企業の経営者等)が直面する意思決定を受講者が自らの視点で追体験することを通じて「自分ならこう行動する」という姿勢を身につける事になります。すなわち「知識の修得」ではなく受講者間の主体的な議論およびロールプレイ等、参加者を主体とした学修体験を追求し、実務家としての世界観・視野を広げることを目標とします。
ケースメソッドでは授業開始前に教員から配布される20-30ページ程度のケースとは通常、ケース本文(教材)とアサインメント(課題)によって構成されています。ケースには必ず「主人公」が存在します、参加者はケースを読みながら教員が事前に設定したアサインメントに対する自分の考えを、ケース主人公の視点を通じて準備することが求められます。
ケースメソッドでは授業前には当日に予定されている全てのケースを対象とした「グループセッション」を前述のアサインメントを利用して実施します。受講者同士が自主的に集まり、ケースアサイメントに対する互いの準備を交換し合いながら授業に備える時間帯ですので、教員が立ち入る事はあまりなく、その中での活動は成績評価にも含まれません。重要なポイントはケースを共通情報として、参加者同士が自由に発言し「共に教えあう」場として運営する事であり「プレゼン準備時間」ではないという点です。
ケースメソッドではコールドコールが終了すると、教員主導によるクラスディスカッションが開始します。授業は学生がプレゼンする場ではありません。教員からの問いかけに対して受講者が発言を求めて一斉に挙手する光景がNHK「白熱教室」シリーズで見られますが、発言は教員に対する「質問」ではなく自分の考えをクラス全体に「主張」する貴重な機会として捉えられ、成績もその個人の発言内容に応じて評価されてきます。
ケースメソッドではコールドコールが利用されることがあります。これはクラスディスカッション開始と同時に、教員から当該ケースに関する質問が受講者1名に与えられる制度です。ハーバード・ビジネススクールをはじめ世界中のビジネススクールが採用する授業の開始手法で、受講者にはケースに関する徹底した予習が求められます。指名された受講者には10分程度の発言が求められ、仮にその指名をスキップすると、授業への貢献がないとみなされ、その授業の単位を落とすことになりかねないというケーススタディならではの冷や汗モノの制度です。
最後になりますが、ケースメソッドでは以下の暗黙のルールが存在します。
1. 正解や不正解はない
2. 発言はクラス全体に対して
3. 授業への貢献度が成績に反映
1+1=2とならないのがビジネスの常識。なのでMBA教育では先人の事例(ケース)を教材とし、自分ならその状況でどう判断し行動するか、を追体験する事で経験値を高める事がケースメソッドの醍醐味といえるでしょう。したがって、ケースメソッドで学ぶ/教える者にとって重要なのは「1つの正解を求めない事」この1点に尽きると思います。別のコラムでもケーススタディに正解はあるのかについて解説していますので御覧ください。
講義とはクラス討議を通じて深めた内容に関連して教員から補足的に解説する部分となります。ケース討論のクオリティはまさに即興的なライブの要素を含んでいますので、当然のことながら板書内容が同じ結果に至る事はありません。また、2,3のケースで1つの学問領域を全て網羅することなど到底不可能です。したがって、こうした補足的な講義が存在するのです。講義はクラス討議の前に実施する場合と後に実施する場合がありますが、私が見てきた範囲では多くの場合は後者が主流です。
この記事の著者
神戸大学経営学部卒業後、大阪大学経済学研究科にて修士/博士(経済学)を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし、規格競争分析に関する論文を多領域に亘って執筆。近年は事業継承に関する研究に取り組む(事業承継学会理事)。ビジネススクールではEMBA/MBAプログラムの立ち上げから運営まで幅広く携わる。
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