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《MBA》山岡隆志教授によるDigital Marketing

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名古屋商科大学ビジネススクール・東京校では、春学期が始まりました。MBAコースの新入生が最初に受講するのは山岡隆志教授のDigital Marketingです。山岡隆志教授は、事業会社でのマーケティング責任者を経験された、現役のマーケティング論の学術研究者です。実務・理論を横断しながら重要な概念を学ぶことによって、マーケティングの本質が見えてくることをLearning Goalとする授業です。


発想の中心は、顧客か製品か


本授業の最初の課題は、発表から60年以上経過した現代でも”マーケティング論の金字塔”と名高い名論文、元ハーバード大学ビジネススクール 故セオドア・レビット教授の「マーケティング近視眼」です。

かつてのアメリカにおける主要産業は、鉄道事業でした。レビット教授は、鉄道会社が衰退した原因は、経営者の発想が、顧客中心(顧客にとっては移動する手段)ではなく、製品中心(鉄道という製品事業)にあったからと分析しました。つまり、鉄道会社の衰退は、製品事業軸から考え、サービスを提供し続けていたからというわけです。顧客が何を想い、何を欲しているのかを正確に捉え、顧客のニーズに合わせた事業定義を設定することが、持続的に企業成長のためには不可欠なことをこの失敗から学びます。

山岡隆志教授は、なぜ現代のマーケティング・コンセプトが顧客志向となっているかをこの論文で深く考えることからスタートして、このあと大量の具体的な企業のケースを使って議論することにより、実践で使えるレベルに昇華させていきます。マーケティングに10年携わってきたマネージャーでさえ、疎かになりがちなマーケティングの基本概念を、MBAコースの新入生に徹底的に叩き込みます。


デジタル時代に求められる「アドボカシー・マーケティング」


顧客の信頼を勝ち取る18の法則

大量生産・大量消費の「成長期」を経て、市場は「成熟期」を迎えます。ソーシャルメディア、スマートフォンが浸透した透明性の高いデジタル時代では、正直な経営を行い、どこよりも競争力がある最高の製品を届ける企業が勝ち残っていきます。ソーシャルメディアのようなコントロールが効かない(第三者が発信)メディアを先進企業は、マーケティング・コミュニケーション戦略の中軸に据え、圧倒的な効果をあげています。デジタル時代に効果的なマーケティング戦略として、「アドボカシー・マーケティング」を実践する企業が増えています。


アドボカシーマーケティング

アドボカシー・マーケティングとは、顧客志向マーケティングの最終形とも呼ばれています。顧客にとって「最善」となる製品やサービスの提供を徹底的に追求することで、顧客をロイヤリティが極まった状態にまで高めることができるので、競争優位の構築に繋がり、長期的な利益を企業にもたらす考え方のことです。(「advocacy」=「支援」「擁護」 )


アドボカシー・マーケティングは、MITスローン経営大学院・グレン アーバン教授によって提唱された考え方です。山岡隆志教授は、グレン アーバン教授の下でこの研究に従事された、アドボカシー・マーケティングの日本第一人者なのです。


デジタル・マーケティングは、より人間に近づく


本授業では顧客本位の取り組みの具体例として、様々な企業のケースを通じて、これらの企業におけるデジタル・マーケティング機能が、顧客とのコミュニケーションにどの様な役割を果たしているのか、ケースディスカッションの中で一つひとつ丁寧に分析していきます。


授業風景

例えば、授業3日目に取り上げられていたGoogleのケースでは、Googleの成功要因についてディスカッションされていました。確かに、Googleは誰もが認める世界屈指のエンジニア集団で、その高い技術力が成功要因の一つであることは疑いの余地がありません。しかし、Googleの成功要因はそれだけに止まらない「何か」がある事を山岡隆志教授は指摘され、そのファシリテートに促された受講生たちは、「顧客を知る」、「多くのユーザー体験を創造する」、「エコシステムを創る」という視点から分析し、ディスカッションをさらに深めていきます。すると、Googleがいかに顧客志向の企業であるのか、その実態が見えてきました。Googleが単なるテクノロジー企業ではなく、顧客と共に文化を創造する主体になっている事をMBAコースの受講生は発見していきました。


この授業のケースディスカッションを通じて、企業は真摯な姿勢で「まず顧客のためになること」とは何かを問い続け、顧客が求めるものに対するソルーションを提供することが必要になります。つまり、顧客と対話するだけではなく、顧客を支援する企業であることの必要性を受講生は理解します。デジタル・マーケティングは、アドテクを駆使することではなく、より人間を身近に感じ人間を知ることが重要であることを体得していきました。


ゲストスピーカーは、日本初のCDO・長瀬次英氏


山岡隆志教授の授業では毎回、豪華なゲストスピーカーを招聘しています。
今回の名古屋商科大学ビジネススクール東京校では、日本ロレアルでCDO(Chief Digital Officer)、Facebook でInstagram日本事業代表責任者などを歴任し、現在ではEXILEなど人気アーティストグループが所属するLDH JAPANのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)兼 執行役員を務める長瀬次英氏がご登壇下さいました。


長瀬氏による講演

MBAコースの受講生には「株式会社サンリオの決算説明資料を分析し、一番の課題と思えることを一つ上げ、その課題に対して、どのようなデジタル・マーケティング施策によって、どのように解決し改善できるかを発表しなさい」というレポート課題が予め課されており、審査の結果、優秀な施策を提案した学生5名が選出され、長瀬次英氏からの講評に引き続き、ご講演頂きました。

長瀬次英氏は、ある分野では世界最大と言われる企業に勤められ、マーケターとして目覚ましい成功を納められています。長瀬氏は、消費者をとりまく環境を網羅するように、様々な事業会社中心に泥臭いキャリアを重ねてこられているので、本当のマーケティングの仕事とは何かを教えていただきました。CDO of The Year 2017を受賞されている、日本初の本格的なCDOとしても著名な方なので、CDOの仕事の本質を体感できる貴重な機会となりました。また、
・マーケティングとは
・マーケティングは必要か?
・これからのビジネスのポイントと手法
など基礎的なお話しもくださったので、研究開発や財務部門といったマーケティング以外の業務に従事するMBAコースの受講生にとっても、マーケティングを身近に感じることができる機会となり、講演後まで質問が止まりませんでした。


インタビュー取材


授業後、山岡隆志教授による長瀬次英氏へのインタビュー取材が行われました。
「これまで手掛けた中で最もエキサイトだったプロジェクトは何か」「顧客ニーズの捕まえ方」といった実務経験談はもちろんのこと、「マーケターとして大切なものは何か」「結局、マーケターとはどういう職業なのか」など、マーケターのトップランナー同士だからこその白熱した対談となっていました。

この時の様子は名古屋商科大学(学部)のHPに詳細の記事が掲載される予定です。(近日公開)
他では滅多に聴けない話が盛り沢山です。ぜひ、そちらもご覧下さいませ。


長瀬氏と山岡教授