企業と社員が成長するために必要なリーダーの本質とは何か?(2)
リーダーが確固たるマネジメントポリシーを持ち、それを詳細に渡って書き記し、メンバーに理解をしてもらうこと、そしてメンバーと業務としてのコミュニケーションをきちんととることがなによりも大切です。そして、組織風土の改革のためには、疑問に思ったことに対してしっかり立ち向かい、改革が必要だと考える同志を増やしていきましょう。たとえ考えが違っていてもいいので、改革に向けてともに歩む同志たちとともに、現実だけではなく未来を見て、少しずつ着実に未来に向けて舵をきります。慎重に見極めていれば、必ずその転換点がやってきますから。
In this discussion, former Vice President and CDO of Ajinomoto, Hiroshi Fukushi, emphasized the importance of a leader having a firm management policy, documenting it in detail, and ensuring that team members fully understand and communicate effectively within the organization. Additionally, the conversation focused on the need for organizational culture reform, urging leaders to face challenges head-on, promote necessary changes, and increase the number of colleagues who are aligned with the vision of reform. Even with differing views, the key message was to move forward together toward a shared vision, balancing both the present reality and the future. The dialogue concluded with the belief that, through careful assessment and steady progress, the turning point toward positive change will inevitably come.
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企業はリボンの表裏でできている
岩澤:福士さんはご著書『会社を変えるということ』で、企業というのはリボンの表裏でできていると書かれていますね。とてもわかりやすい例えですが、企業変革のためには、リボンの表裏の話のどこがポイントなのでしょうか?
福士:リボンの表は現実、裏に未来が描かれていると考えます。仕事をしていると、ほとんどの人が表の現実しか見ていません。しかし未来を実現するために、改革をする必要があると感じた時には、現実を否定してリボンを裏返せばいいのでしょうか?もちろんそんな簡単なことではありません。現役時代、私は何度もリボンをひっくり返そうとしましたが、1人ではうまくいきませんでした。情熱をもって動かそうとしたあまり、大きな失敗をして天地がひっくり返るような、まるでテレビドラマの「半沢直樹」のような失敗を経験してきました。
岩澤:それでリボンをねじる、という発想に至ったのですね。
福士:そうなのです。リボンはひっくり返すのではなく、ねじるべきだと気付きました。仕事のやり方を修正しながら、ここが転換点だと思った時に、未来に向けてリボンをねじる時がやってきます。最初は小さいねじれですが、賛同者を増やし、大きなうねりとなって、裏の未来が見えてくるようになります。
岩澤:賛同者を増やしていくということも、企業風土改革や変革には必要な要素なのですね。人事にもつながるように思います。
福士:リボンのねじれを共にぎゅっとひねって、未来を見るのには、必ず賛同者が必要です。そして最終的には人事です。人事面などで内向きの闘争が起きないように、取締役会がきちんとガバナンスを効かせることが大切です。
岩澤:私はエグゼクティブMBAのクラスを担当していまして、受講生の平均年齢は44才くらいなのですが、彼ら彼女らは会社の組織改革に取り組みながらも非常に悩んでいます。ぜひ彼ら彼女らに、福士さんからメッセージをいただければと思います。
福士:どんな局面にあっても、絶対に夢を持ち続けなさい。夢は持ち続ければ必ずできると確信しなさい。そして仲間を増やしなさい。たとえ意見が違っていてもいいので、会社を変えることに興味があり、きちんと勉強したいと思っていて、フェアな意見を言う人を同志として集めなさい。数人ではダメです。例えば50人ぐらい集まったら、全社を動かす力になります。
岩澤:ありがとうございます。素晴らしいお話でした!世界に通用するマネジメントを、日本の伝統企業で実現させた福士さんならではの企業風土改革に必要なリーダーのあり方について、興味深く聞かせていただきました。ありがとうございました。
another question about AI technology
福士:DX、AIを導入する時に必要なことは、1つ目にホワイトカラーの生産性について深く議論をして取り入れること。そして2つ目に、自社だけではなく関係各社と協働して社会の問題を共同解決し、価値プロセスのデータを共有化すること、3つ目には1番と2番のレイヤーの上に、新たなビジネスモデルを作り上げること、だと思います。こうしたポイントを理解してDXを進めていけば、改革の幅は広がっていくでしょう。
味の素株式会社 元代表取締役副社長兼CDO 福士 博司
Hiroshi Fukushi
北海道札幌市生まれ。北海道大学大学院工学研究科修士課程を修了後、味の素株式会社に新卒で入社し、働きながらUSQ(University of Southern Queensland)にてMBAを取得(2004年)。アミノサイエンス事業を中心に社内で経験を積んだのち代表取締役副社長兼CDOに就任。味の素初のCDOとして全社のDXを成功させ、一般社団法人CDO Club Japan のCDO of The Year 2020を受賞。現在は味の素の特別顧問、東洋紡、雪印メグミルクの社外取締役や、他数社の経営顧問などを務めながら企業改革の実践とそのガバナンスをサポートしている。著書に『会社を変えるということ』(ダイヤモンド社)がある。
味の素株式会社 元代表取締役副社長兼CDO 福士 博司さん
名古屋商科大学ビジネススクール研究科長 岩澤 誠一郎
Seiichiro Iwasawa
1987年野村総合研究所入社、証券アナリスト業務に従事。2006年から野村証券でチーフ・ストラテジストとして内外の株式を中心に市場を分析。10年にマネージング・ディレクター。12年から名古屋商科大学大学院教授。21年から大和アセットマネジメント学術アドバイザー。22年に名古屋商科大学大学院研究科長に就任。専門は金融経済学・行動経済学。International Review of Economics and Finance誌などに論文を発表。著書に『ケースメソッドMBA実況中継04行動経済学』。米ハーバード大学博士(経済学)。
研究科長 岩澤誠一郎 教授