名古屋商科大学ビジネススクールは、MITスローン経営大学院における短期のEMBAへの参加を支援しています。
2017年3月参加レポート
概要
MIT Sloan School of Management(以下「MIT」)のExecutive Education Programに参加してきました。Executive Education Programは、いくつかあるMITのコースの中でも、企業の幹部(C-Suitesと呼ばれる幹部や、マネージャークラス)や国家機関の幹部を主な対象としたプログラムです。全体数で年間約50のプログラムから構成され、各プログラムは「Strategy & Innovation」「Management & Leadership」「Technology, Operations, & Value Chain Management」という3つのトラック(領域群)に色分けされています。おおかたのプログラムは約2日間の日程ですが、3日間から最大8日間のものもあります。同一トラック内から3プログラムを修了し、更に同トラックもしくは他トラックからもう1プログラムの合計4プログラムを修了すると、対象トラックに対するExecutive Certificateが発行されます。更に4年間の内に3つのトラックの全てを修了し且つ25日間の参加の条件を満たすと、ACEという更に1ランク上のCertificateが発行される仕組みです。
プログラムの進行
今回、私はStrategy & Innovationのトラックに絞り、日程が連続した4つのプログラムに参加しました。それぞれ「Building Game-Changing Organizations: Aligning Purpose, Performance, and People (2日間)」、「Strategies for Sustainable Business(3日間)」、「Developing and Managing a Successful Technology Strategy(2日間)」、「Innovation Ecosystems for Leaders: Delivering Sustainable Competitive Advantage(2日間)」と、各プログラムのテーマは異なるものの、有機的な繋がりを持っています。例えばStart-upと大企業に共通した課題、持続的な成長をどのように創造するか、Start-upと大企業の戦略的且つ互恵的な関わり方、といった点で体系的に学ぶことができるようになっています。参加者数はプログラムによって異なり、シーズンにもよるようですが、私が参加したものでは13名の小規模で教授陣と密なコミュニケーションがとれるものから、大規模なものでは50名のクラスまでありました。国籍はアメリカ人が5割前後、その他はサウジアラビアやUAE、南米、欧州各国、ケニアやナイジェリアといったアフリカからの参加者、そしてアジアからはインドと日本で、日本からの参加者は私一人でした。どのプログラムも、Executive Centre専用の食堂でのネットワーキング朝食から始まり、ランチも同食堂でのネットワーキング、初日の夜はネットワーキングレセプションと、プログラムの休憩時間も含めてネットワーキングの機会が提供されています。プログラムの事前準備として、ハーバードのケースやMITのレビュー記事などがコース開始の約2週間前に配布されており、それを読み込んでくることが大前提です。教授陣の講義の進め方は、プレゼンテーション資料で一通りの説明をした後、グループディスカッションやロールプレイ、個人やグループでの発表を行うスタイルで、NUCBのようなケースディスカッションは、企業での実例としての位置付けとして、一部のプログラムに限って行われました。最後はどのプログラムにも共通しているのですが、振り返ってみて自身にとっての”Take away”は何か、実務や個人の日常の中で今回学んだことをどう生かすか、を自身の言葉で書き表し、プログラムによっては教授にコールドコールで聞かれます。可能な限り、具体的に作成するよう、求められます。
ダイバーシティ―の中での他流試合で学んだこと
参加者の多くは企業のオーナー経営者、COO、CTO、CMOといったいわゆるC-Suitesと呼ばれる幹部、Director、部門長、国家機関や軍のマネージャークラスといった人達で、見たところの年齢では40代~50代が多く、30代が2割程度といった構成でした。私が個人で参加していると言うと毎回驚かれましたので、企業派遣による参加者が多いと思われます。ダイバーシティ―に富んだ環境の中での、教授と参加者のインタラクションやディスカッションになると、教授は勿論のことですが、参加者の知見の広さや経験に基づく示唆に富む発言が多く、大変勉強になりました。同じテーブルに多種多様な企業のDirectorクラスの方がいて、議論をしたり、同じ問題でも国によって事象が異なる話が聞けたりと、大変刺激を受けました。他方で、名古屋商科大学ビジネススクールで1年間経験してきたフレームが、他流試合の中でも随所で役に立ちました。例えばセグウェイは失敗か?テスラは成功か?といったテーマでの講義がありましたが、名古屋商科大学ビジネススクールでイノベーションのジレンマを勉強していたおかげで、議論の素地ができていたこと、テスラのアプローチはどのように位置付けられるのかを理解できたことは、大変有意義でした。
学ぶ環境としてのMIT
MITの校舎群はチャールズ川沿いに校舎が並んでおり、街路樹にリスを見かけるなど、都市と自然が調和したすばらしい環境にあります。また、学校周辺には世界的に有名なIT企業や製薬企業、投資ファンド等が集積しており、学校や卒業生との連携の強さを物語っています。教室は、Executive Education用の教室はフラットなタイプで、教室前には飲み物や軽食が常備、専用食堂を持つ立派なものです。プログラム参加者の中にスローンスクールのIT関係者がおり、彼の案内で一般のMBA教室も案内してもらう機会を得ました。MBA教室は名古屋商科大学ビジネススクールのような階段型・劇場型の教室がほとんどで、新旧どの教室もITシステムが標準化・統一化されていたことが印象的でした。宿泊には大学のドミトリーといった施設を使うことはできず、私も含めて参加者の多くは近隣のホテルに滞在していました。また、近隣のビルにはMITがサポートするベンチャーカフェという交流施設があり、毎週木曜日の夜には起業家や投資家、弁護士、大学関係者が集まっています。Innovation Ecosystemのプログラムの担当教授の計らいと案内で、木曜日の授業終了後に、ベンチャーカフェで起業家をサポートしている現場を体験することができました。シリコンバレーとは異なるものの、ボストンにベンチャーを育てる風土が醸成され、Innovation Ecosystemを理論だけではなく実体験できたことは、大きな収穫となりました。