A DDP study abroad report from Syed Faraaz, who participated in Double Degree Program at Luiss Business School in Italy from September 2021 to June 2022.
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留学レポート
Student Reports
フランスにある提携校、EMLYON Business Schoolで開催されました約2週間のサマースクールへ本学マネジメント研究科に在籍中の五月女さんが参加されました。留学レポートが届きましたのでご紹介いたします。
成田空港を発つこと約11時間、ベルギーのブリュッセルを経由して、フランスの東部、パリに次ぐ第2の規模を持つ都市リヨンへ向かいました。リヨンに到着したのは現地時間の午後6時頃でしたが、6月のフランスは午後9時過ぎまで明るく、それだけでも自分がどこか遠くに来たことを思い知らされました。私自身、ビジネスによる出張を含めてヨーロッパの都市はいくつか訪問したことがありましたが、初めてのリヨンへの一人旅は不安との戦いでした。
リヨンは『星の王子さま』で有名な作家、サン テグジュペリ生誕の地でもあり、彼の生誕100周年を記念して、空港がリヨン・サン テグジュペリ国際空港と改名されました。空港は地方都市という割には規模の大きい(ターミナルが3つ、羽田空港並み)きれいな空港です。留学期間がちょうど、4年に1度開催される欧州サッカーの祭典のひとつ「EURO2016」と重なっていたことから、空港では各国のユニホーム等を身にまとったサポーターたちを多く見かけました。
リヨン市内までは「ローヌエクスプレス」という赤い高速トラムで移動するのですが、まずはこの切符の買い方が分からない。『地球の歩き方』を見てもそんなことまで細かく書かれていない。販売機がフランス語表示かつクレジットカードあるいはコインしか利用できない(私は€紙幣しかない)という状況に、到着早々額には脂汗。今後行かれる方は、是非事前に私までご相談ください。市内のメトロ(地下鉄)を含めて、解決&お得な方法を伝授します。
後ろに並んでいた外国人の助けを借り、なんとか乗り込んだローヌエクスプレスに揺られること約30分、リヨン市内のパールデュー駅に到着。学校からは、ここでメトロに乗り換え15分、さらにバスで20分というルートを紹介されていたのですが、大きなトランクを抱え、異国の地で不安だらけの私はパールデュー駅からタクシーでの移動を選択。しかし、ここでもまた問題発生。運転手が英語が分からない。目的地の住所が書かれた紙を見せても(その記載自体が英語のため)よく伝わっていない様子。フランスなのに何往復かの禅問答をこなした後、僕が発した「EMLYON(アムリヨン)」を理解してくれ、ようやく出発。“さすがEMLYON、僕の選択は間違っていなかった”と勝手に感心しながら学校へ向かいました。
パールデュー駅から約20分(30€弱)、ようやくEMLYON Business Schoolに到着。私が期間中宿泊するレジデンスも敷地内にあるのですが、今度はどの建物なのか分からない…誰かに聞こうにも、夏季休暇中の日曜日、時刻は既に午後8時過ぎ、そもそも人がいない。もう半泣きでレジデンスを探し回り、やっと道を挟んだ反対側の奥に見つけたLe Galion(レジデンスの名前)。なのに、ドアが開かない。ガラス越しに中を見ても誰もいない。呼び鈴的なものを直感のみで操作し、待つこと約5分。野宿を覚悟したその時、寮の管理をしてくれているMonsieur パトリックが出てきてくれました。神でした。
パトリックに導かれ、部屋の鍵を受け取るために待っていたところ、往路最大の問題が発覚。私の名前が宿泊予定者リストにないそうで…ここまで来るともう笑うしかないので、陽気なパトリックに任せて待つことさらに10分。ようやく部屋の鍵を渡され、「明日の朝、学校側の事務員があそこの部屋に来るから、そこでもう一度手続きしてくれ」と。「OK、パトリック、ここまで来たんだから、今の僕は何でもできるよ。ありがとう」と日本から持参した“柿の種”をお礼に差し出して、部屋のベッドへ倒れこんだのでした(ちなみに翌朝手続きに行った際には、2週間分の宿泊費≒290€を取られました)。
フランス東部のローヌ=アルプ地域圏は東にスイスアルプスを擁し、スイス、イタリアと国境を接しています。登山で有名なシャモニー、冬季オリンピックも開催されたグルノーブルやアルベールヴィル、ミネラルウォーターの採水地エビアンも域内にあります。ローヌアルプ地域圏の首府でもあるリヨンは市内にソーヌ川、ローヌ川という2本の河川が流れる風光明媚な都市で、ソーヌ川の西側、石畳の街並みが中世の雰囲気を残す旧市街はユネスコ世界遺産に指定されており、フルヴィエールの丘の上にそびえるノートルダム大聖堂とそこからの眺めに圧倒されます。
旧市街には「トラブール」と呼ばれる抜け道が数多く残されており、一見、建物の入り口にしか見えないのですが、誰でも勝手にドアを開けて通行することが出来ます。これは、過去盛んであった絹織物を雨でも濡らさずに他の建物へ運べるようにと整備されたものだそうで、今でも観光だけでなく地元の人々の生活通路として利用されています。
両河川に挟まれた新市街が現在のリヨンの中心になっており、市庁舎やオペラ座、リヨン美術館の他にもプランタンに代表される百貨店やブティック、レストランが並び夜中までにぎやかな地区です。ローヌ川の東側は金融街、さらにその東が新興住宅街であり、街が西から東へと発展してきたのがよく分かります。
リヨンは美食の街とも言われており、市内にはリヨン出身の有名シェフの名を冠した「ポール・ボキューズ市場」があり、多くの食材が揃います。ワインで有名なボジョレーはリヨンの北にあるローヌ県、フランスで最高級の鶏とされているブレス鶏もリヨンの北東に位置するアン県の産物です。市内でいくつか行ったレストランも、すべて後悔するようなことはなく、日本の感覚からすれば値段も安かったと思います(学校の近くにあるカルフールで食品を買うほうが高く感じました)。
また、リヨンは映画発祥の地でもあります。リヨン出身のオーギュスト/ルイ・リュミエール兄弟が1895年に、エジソンが発明した「キネトスコープ」という機械を改良して世界初の大衆向け映像装置「シネマトグラフ」を開発したのが始まりで、今では映画博物館とともに学術的な映画研究機関である「Institute Lumiere」も設立されています。リュミエール兄弟のEntrepreneurshipを追跡する見学ツアーも今回のモジュールに組込まれていました。
最後に、前述のとおり、今回の留学期間はEURO2016の開催期間と重なっており、リヨンのスタジアムも試合会場になっていることから、街の中はEUROムード一色でした。リヨン市内の中心的ランドマークであるベルクール広場はパブリックビューイング会場となっており、周辺まで含めて毎夜各国のサポーターが大集合、大合唱でした。日本でもサッカーは人気があるスポーツだと思いますが、大陸内を異動して集まる各国サポーターの多さを含め、欧州でのサッカーへの情熱は日本とは比較にならないことを実感しました。
EMLYONのサマースクールは2つのモジュールに分かれて約1か月開催されており、私は後半の2週間に開催される“Global Entrepreneurship”というモジュールに参加しました。実はEMLYONは起業家育成という分野では世界的にも有名なビジネススクールであり、浙江大学(中国)、Pardue University(米国)とともに「Global Entrepreneurship Program」を運営し、欧州最先端の起業プログラムを提供しているのです。私は名古屋商科大学ビジネススクールではBIPに所属し、新たなビジネスアイデアをどのように創造し、実践していくかということを学んでいますので、そのアイデアを実際に社会のなかで形にするためのステップとして参考にしたいと思い、このモジュールを選択しました。
モジュールの全体観として、新たな(Innovativeな)ビジネスアイデアを如何に発見するかというよりも、よりアカデミックに「起業の機会はどこにあるのか」、「起業家に必要な素質や考え方はどのようなものか」、「起業する際に足らないリソースをどのように補えばよいか」という点に重点が当てられていました。また、今回のモジュールを担当した教授が「Social Entrepreneurship」も研究課題にされていることから、単に事業を興すことにとどまらず、“どのような社会問題を如何に解決し、企業として社会に貢献していくのか”という分野についても、フランスの企業を例に多くの議論がなされました。この分野は、近年注目が集まっていると思いますが、私の知る限り、日本の大学院などではまだあまり展開されていない内容であり、非常に参考になりました。
具体的な内容としては、担当教授によるレクチャー、起業および起業家に関するケーススタディ、起業家を招いての講演、地元企業への訪問、グループによる社内ネゴシエーション・シミュレーション(Maze Game)、リヨン市内に出て指定されたミッションをクリアするグループ・アウトドア・アクティビティ“Quest”等、非常に多くの内容が2週間のスケジュールに盛り込まれていました。一方で、深夜まで宿題に追われるような状況でもなく、参加者同士のリレーションを構築するための時間も確保されており、バランスの良い構成であったと思います。
私が参加したモジュールの参加者は23名、欧州や米国のビジネススクールから複数名で参加しているパターンもありましたが、その国籍はイタリア、オランダ、ロシア、フィンランド、トルコ、イラン、カメルーン、アメリカ、コスタリカ、ジャマイカ、シンガポール、中国、台湾、インドネシアなど実に様々で、日本からの参加者は私のみでした。アジア地域出身といっても私以外は欧州や米国のビジネススクール経験者であったため、実質的にアジアからの参加者が私だけというような状況でした。年齢層としては20代前半~40代後半まで幅広く、私は年齢的には上から3番目という環境でした。男女別の比率は6:4でやや男性が多く、社会人経験がある参加者は全体の2/3くらいだったと思います。
当然ながらこれだけのダイバーシティを経験できる機会は稀で、彼らの考え方の根本にある各国の文化や価値観、宗教観(イスラミックの学生は日が沈むまで食事をしないラマダン中でした)を体験できたことも非常に貴重な経験であったと思いますし、私自身ももっと視野を広げないといけないと反省する機会でもありました。
私は英語が得意ではありません。正直に言って、今回の留学も事前に訓練はしたものの、レベル的には結構なチャレンジだったと思います。他の参加者も英語が母国語ではありませんが、彼らのビジネススクールや職場では普通に英語が使われているため、ネイティブほどではないにしても会話には全く支障なく、リーディングも私の1.5~2倍くらいのスピードであったように思います。ただし、各国の訛りは想定以上に聞き取りづらく、教授の話は分かるけれど、他の参加者の話が聞き取れない、という場面も多々ありました。このような状況も、その場面へ行かないと、日本でいくら英会話を履修しても克服できるものではないと思います。
今回のモジュールでは教授も非常にフレンドリーで、講義中にも随時、学生から多くの意見が発せられました。この議論の中で発言が出来ないと、自分の存在を認めてもらえないのですが、その場で即興的に意見を発することは、想定以上に難しかったです。過去に留学された諸先輩方のレポートにもあるように(参加者の年齢や社会経験という要素が関係する部分も多いと思いますが)、思考の範囲や深さは名古屋商科大学ビジネススクールの授業のほうが高いレベルを求められていると思います。しかしながら、簡単な内容でも適切なタイミングで“刺さる”意見を英語で述べることはなかなか困難で、語学的な抵抗感もあり、初めの数日はなかなか発言のタイミングがつかめず、また意を決して発言しても必要最低限の言葉しか伝えることが出来なかったという現実がありました。
講義の修了後、市内へ出かけない日にはレジデンスのキッチンに食材を持ち寄り、参加者の一人であるイタリア人が適当に料理を作ってくれて、みんなでシェアしながら雑談&EURO観戦というパターンが多かったのですが、ある日、自分の英語やコミュニケーションに関する懸念を夕食の席で他の参加者に話したところ、「確かに上手とは言えないけど、Hiroshi(私)の意見はOne Sentenceの中にEssenceがまとめられていて、議論の内容が分かっていないと発言できないValuableな意見だと思う。みんなもそう思っているよ。もっと自信を持って良いんじゃないかな。」という、ある意味、予想外の反応がネイティブのアメリカ人からあり、その場にいた全員が賛同してくれました。社交辞令かもしれませんが、自分の中にあった英語でのコミュニケーションに関する漠然とした不安や抵抗感が大きく軽減され、まずは(文法的に間違っていようが、多少話題が異なっていようが)コミュニケーションを積極的に仕掛けることの重要さを実感しました。そして、この一言だけでも、遠くフランスまで来た意味があると有難くなりました。
実際、その後は気が楽になって他の参加者との会話にもより積極的にできるようになり、講義中も議論に切り込んでいくことが出来るようになりました。今思えば、自分から英語が上手くないということで消極的になっていたようにも感じますし、そんな私に最も大切なOpen mindを思い出させてくれた仲間にはとても感謝しています。このような経験も、まったく日本語が通じない環境に身を置く機会がないと気付けないことだったと思います。
今回のモジュールは、そのテーマが”Entrepreneurship: Global issues, Local opportunities“ですので、参加者は将来的に何らかの事業を自ら興そうと考えている部分があります(もちろん、なかには旅行気分としか見受けられないような状況もありましたが、海外は夏季休暇期間ですし、社会人経験のない若者もいましたので致し方ないと思います)。参加者同士でも、随所で「日本に戻ったら何をするんだ?」とか「こういうアイデアがあるんだがどうだろう?」さらには「日本と●●(自分の国)とでビジネスが出来ないか?」という会話がなされました。私も、仲良くなったイタリア人(レジデンスでのシェフ担当)に「ローマには良い日本食レストランがないんだ。Hiroshi、ローマに来て俺と一緒にレストランをやろう」とか、「日本の良いモノ、サービスをカメルーンにいっぱい持ってきてくれ」さらには「日本とイランを結ぶ、オイル以外の新しいビジネスが出来ないか、一緒に考えてくれよ」という宿題をたくさんもらって日本に帰国しました。
不思議というか、今回の参加者だからなのか、海外ではそういう感覚が一般的なのか判断できないのですが、「このビジネスは儲かると思うんだ」という動機を聞かなかったことが印象に残っており、”お金を稼ぐためのビジネス“ではないところに起業の意義を見出しているのかもしれないと考えました。実際、具体的なビジネスアイデアとして出てきたものは、その新規性や革新性は高くないのですが、今回の講義の中で印象に残っている起業家の心構えとして “Opportunities are created, not found”というものがあり、彼らの中では「如何に事業機会を創るか」という観点がより強く意識されていると感じました。日本にいると気が付かないビジネスチャンスを認識できる場面も多々あり、“彼らとビジネスが出来る可能性がある”、“世界の何ヶ国にもわたって起業家(候補)のネットワークが出来た”と考えただけで、とてもワクワクするとともに、様々なBusiness Opportunityにチャレンジできる機会を得られたことに感謝しています。
帰国後すぐに“I miss all of you”のメールが飛び交い、今後、私はイタリアとカナダに行かなくてはならないような状況になっていますし、トルコとフィンランドからは日本へ遊びに来ることになっています。彼/彼女らとのネットワークがこれからも続くと思うと、この2週間が私にとってどれほど価値のあるものだったかは計り知れません。
残念ながら、帰国直後の6月29日未明(日本時間)にトルコのイスタンブール空港で自爆テロがありました。今回のモジュールにはトルコのビジネススクールから3名が参加しており、その3名がイスタンブール在住ということを参加者全員が知っていたので、瞬く間に我々参加者で作ったWhat’s Up(LINEに似たSNS)のアカウントには世界各国から彼らの安否を心配するコメントや無事を知らせる返信、犠牲者への追悼の意を表すツイートがあふれかえりました。今までであれば遠い国で起こったひとつの事件でしたが、今ではとても身近なものとして感じられます。講義や体験の内容ももちろんですが、世界中に仲間ができ、彼らとグローバルな舞台で活躍できる機会を手に入れられたことに、今回の留学の成果が詰まっていると感じています。最高の2週間でした。
東京校 マネジメント研究科所属 五月女 宏さん
本学は世界各国100校以上のビジネススクールと提携を結んでおり、そのほとんどの学校で授業料免除で交換留学に参加いただけます。ご興味のある方は大学院事務局までお問い合わせください。
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