ユニクロ柳井氏と日経編集委員に見る「次世代ビジネスモデル」理解度の差
日本経済新聞1月13日の記事が面白い。「チェーン店の時代、終結 ファストリ柳井氏が語る未来」
ユニクロ柳井氏が考える次世代ビジネスモデルは、「これからは情報産業とサービス業だけになる。小売業もなくなる。すでに製造から小売りまで一体化したがそれでは足りない。デジタル化は消費者個々人の嗜好を生産に直結できる可能性を持つ」というもの。
その通りであり、ZOZOがZOZOスーツを出し、洋服の青山が採寸を強化する理由は、ここにある。消費者の体形データを蓄積し、消費者にベストフィットのアイテムを提案する。その繰り返しにより、次第に消費者が提案企業を信頼し、「あの企業の提案を聞いていると、自分で考えるよりも良い結果になる。あの企業は信頼できる」と「絆」を生むことこそが、次世代ビジネスモデルの企業と消費者の関係なのである。それを柳井氏は「デジタル化は消費者個々人の嗜好を生産に直結できる」と表現する。
一方、日本経済新聞の編集委員は、「リアル店舗で成長している間にZOZOなどネット専業が台頭。米アマゾン・ドット・コムもファッション事業に参入した。ネット分野での出遅れ感は否めない」と述べる。しかし、僕からすると、リアルだろうがネットだろうがどうでもよく、チャネルの二項対立に意味はない。大切なことは、リアルでもネットでも、それぞれの特性を生かして、消費者データを取得すること、取得するだけではなくそこから消費者に良い提案をすること、消費者に良い提案をし続けて、企業と消費者の間に「絆」を作ることである。
デジタルの最終目的は、消費者との「絆」を作ること
この企業と消費者の「絆」の作り方について検討したのが、2017年9月に上梓した『デジタルマーケティングの教科書』だ。
2000年から2015年くらいまでは、リアルチャネルとネットチャネルの二項対立でビジネスモデルを論じることに意味があったかもしれないが、現在はチャネルの違い自体はそれほど重要ではなく、それぞれのチャネルからどのような消費者データを取得し、消費者とどういう関係を構築するかのほうが、重要である。
オイシックス執行役員の奥谷氏も「消費者の行動を考えるうえで、もはやオンラインとオフラインを切り分けることがナンセンス」(「NEWS PICKS マーケティングの未来を解き尽くす」より抜粋)だと言う。
「消費者は、「野菜を買う」という行為においてさえ、リアルなスーパーだけでなく、ネットスーパーやオイシックスのような定期宅配サービスを使い分けて」いる。だから、重要なのは「消費者の行動を把握するためにも、オンラインとオフラインのそれぞれに接点を作」ることなのである。
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