日本動物医療センターグループ 2015
アブストラクト
日本動物医療センターグループは現在、創業50年近い歴史のある「日本動物医療センター」、上野弘道の設立した会社で運営する「麻布十番犬猫クリニック」「麻布十番犬猫クリニック宮古島分院」との三病院で構成されている。上野が株式会社日本動物医療センター(以下、JAMC)に入社してからの改革により病院の売上も近隣からの評判も順調に伸び、地域の家庭動物医療の中心的存在として成長してきていた。犬の飼育頭数が東京都では増えている一方で全国的には減少が続き、獣医業界全体は大きな危機感に包まれていた。一部の病院の大型化や大企業の業界参入が、一人の獣医師で診療を行う小規模病院の集まりでしかなかった過去のビジネスモデルの破壊を予想させていた。現在の犬猫を中心とした家庭動物を対象とする動物病院業界の経営環境は激変していた。以前は開業すれば経済的な成功をほぼ収められていたが、それは既に過去のものとなっていた。それまで獣医師は国家資格取得後数年の経験を経て開業するのが一般的であったが、上野は入社後数年でJAMCにおいて勤務獣医師として働き続けることを決心した。勤務医として働き続けることは当時まだ珍しい時期であったが、多くの勤務獣医師が協力しあうことで、24時間365日、獣医療レベルを維持できるシステムにしたいとこの時すでに考え始めていた。日本ではますます年金不安が叫ばれている。家庭動物の臨床獣医師は独立開業が通常であったため定年退職はない。一国一城の主になれる獣医師に対して、勤務獣医師として働き続けてもらう仕組みをここまで作ってきていた。そのことでJAMCグループの付加価値を高め、成長させてきたのは事実である。長く勤務してくれる獣医師が増えることはグループの大きな強みとなっていた。しかしながら、将来グループ内の高齢化が進む懸念も出てきた。のちに時代の流れが勤務医志向を後押ししたとはいえ、勤務獣医師の働き続けられる世界を目指してきた上野にとっては生涯勤務医として安心して生活できる様にすることは、自身が解決すべき大きな課題であると感じていた。本ケースでは、上野の入社以来の改革や病院の変遷が描写されている。好景気から突然の不景気に変わり、動物病院間での競争が激化していった。また、労務環境の整備が著しく遅れていた動物病院業界においても社会の要請に応え法律を守ることの重要性が認識されるようになっていった。将来の不安もぬぐえない環境下で、上野が挑戦すべき経営課題に気づいていく。その過程で、どのように考え、どのようなビジョンを示し、どのようなビジネスモデルを目指し、どのような組織運営を行っていくべきなのかを検討する。
詳細情報
ケースID | 15-1083 |
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登録 | 2015 |
業界 | 獣医業 |
分析領域 | 総合経営 |
ページ数 | 22 |
言語 | Japanese |
ティーチングノート | あり |