本学の原田泰教授が一般社団法人日本会計学会にて、第3回日本統計学会中村隆英賞を受賞されました。日本統計学会中村隆英賞は経済統計の研究及び実務ならびにこれに関連する分野の分析、理論、手法等の発展において顕著な業績のあった個人を顕彰し、我が国の経済統計の発達、普及、啓発に貢献することを目的として一般社団法人日本会計学会により設立された賞です。
原田教授は1974年に東京大学農学部農業経済学科をご卒業、1979年米国ハワイ大学経済学修士課程修了、2012年学習院大学経済学博士課程取得されたのちに、経済企画庁入庁。同庁国民生活局国民生活調査課長、調査局海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、株式会社大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、日本銀行政策委員会審議委員などを経て、2020年より本学に赴任されました。これまで『アベノミクスは進化する』や『ベーシックインカム』をはじめとした多数の著作活動、研究活動が評価され、今回の受賞に至りました。
授賞理由
原田泰氏の業績は数量的な歴史分析が大きな比重を占めており、特に、昭和恐慌期の実証分析は、中村隆英先生の昭和恐慌分析を補強するものである。また、経済学、経済政策についての啓蒙的著作においては、データの整理と簡単な実証分析により、事実や経済理論に基づかない思い込みの議論を批判し、少なからぬ人々にとって意外な結論を導き出している。さらに、金融政策を巡る実証分析では、経済変動において、金融政策が重要であることを示している。また、実際に行われた金融緩和政策によって、雇用、財政、所得分配などが改善したことを指摘している。特に、構造失業率3.5%説に対して、本当の構造失業率が大幅に低いとの指摘は貴重である。これらの業績は中村先生のアカデミックな歴史記述のなかから現代の政策を考えさせる『昭和恐慌と経済政策』、『昭和経済史』などと共鳴するものである。原田氏の業績を一言で言えば、統計と現実を見て、素朴な、あるいは本格的な実証分析によって、真実が何かを探求したことである。これは統計の意義そのものであり、また、中村隆英先生が目指されたことでもある。原田氏の広範な業績は、日本統計学会中村隆英賞にふさわしい。(日本統計学会HPより)