タックス・ヘイブンは天国か?
最近パナマ文書で何かと話題の「タックスヘイブン」、恐らく多くの方が誤解しているのではないかと思うキーワードの1つです。何が誤解かというと「Tax Haven(ヘイブン)」は「Tax Heaven(ヘブン)」ではありません。「Haven」は避難、安息地という意味であり、天国の「Heaven」ではありません。まぁ、そこに資金を回避することに成功した方にとっては、まるで天国にいるかのような居心地かもしれませんが(笑)
さて、何かと悪者扱いのタックス・ヘイブンですが、租税回避を行うことが「悪」だと一方的に決めつけるのは短絡的です。そもそも、悪だと主張するメディアの根拠も「本来、公共インフラなどの整備に納めるべき税金を逃れているのに、それらのサービスを享受しているじゃないか」、「富裕層のみがいい思いをしている」という論調で、極端な言い方をすると「俺たちみんな払っているのに、あの企業は払っていない、から不平等だ、悪だ」というスタンスです。
よく考えましょう。企業は何を目的(ミッション)として活動しているかというと、企業価値を高めるために全ての神経を集中させているのです。企業が企業価値(時価総額)を高める理由は簡単で、企業の実質的な所有者である「株主」がそれを求めているからです。これはMBAのコーポレートファイナンスの大原則ですし、市場経済の自然の流れといえましょう。
タックス・ヘイブンが生まれた背景には「企業活動のグローバル化」と「世界各国の経済的背景の多様化」があります。もし県ごとに消費税や所得税が異なれば、企業は当然安い税率の県に本拠地を置こうとするでしょうし、そこに資金を集約させようとするでしょう。日本ではありえない状況ですが、海外では道路の向こう側の税率が異なる例すら存在します。
確かに、合法であれば何をしても良いわけではありませんが、同時にそうした手法を全く知らない事の方がグローバルに活動する企業にとってはリスクと考えるべきです。したがって株主が、配当など気にせず可能な限り大胆に納税せよと大合唱するのであれば別として、こうした法律の抜け穴(もしくはグレーな部分)を利用した節税行為に企業を走らせるのは、結局私達、株主だったりしますのでご用心下さい。
ーーー解説ーーー
「税引後利益/総発行株式数」で算出されるEPS(Earnings Per Share)とは1株あたりの利益を指すため、株式投資家にとって最も重要な数値の1つであり、株価を左右する指標として知られています。なお分子の「税引後利益」とは以下の手順で算出できますので、「税金」の部分を圧縮できれば「税引後利益」は増加するので「EPS」が上昇して「株価」の上昇が期待されます。
①売上総利益・・・売上高ー売上原価
②営業利益・・・①売上総利益-諸経費
③経常利益・・・②営業利益-営業外損益
④税引前利益・・・③経常利益-土地・株などの損益
⑤税引後利益・・・④税引前利益-税金