アブストラクト
情報セキュリティ対策には、コンピュータ・ウイルス(以下、ウイルス)対策、不正侵入対策、IT資産管理、認証・暗号化、端末操作監視・端末ログ管理、物理的セキュリティなど様々な分野が存在している。その中でもトレンドマイクロ株式会社(以下、トレンドマイクロ)は、ウイルス対策という単一分野に特化し、セキュリティ関連製品やサービスを提供している日本に本社を構えるグローバル企業である。トレンドマイクロは、創業以来順調に成長を遂げ、個人向けのコンシューマー市場・法人向けのエンタープライズ市場(以下、法人向け市場)ともに日本国内シェア第1位のリーダー企業となった。トレンドマイクロは、ウイルスの誕生期からウイルス対策という概念と市場そのものを創造し、開拓してきた。トレンドマイクロの創業者であるスティーブ・チャン(以下、スティーブ)は、ウイルス対策市場の持続的成長を確信し、すべての資源をウイルス対策ソフトの開発に投入してきた。IT環境の変化に伴い新たに発生する将来の脅威を予測し、他社に先んじて製品を市場に投入することで市場シェアを高めてきた。一方、トレンドマイクロは大きな転換期を迎えつつある。近年、インターネットやITインフラが社会経済活動に不可欠な基盤となる中で、国家や特定の企業・組織を狙うサイバー攻撃が後を絶たず、情報セキュリティに対する脅威が世界的に拡大している。昨今のサイバー攻撃は、マルウェアの拡散だけではなく、不正アクセス、脆弱性への攻撃、中間者攻撃など攻撃手法が多岐に渡るなど、高度化・複雑化しており、これまでトレンドマイクロが事業領域としてきた従来のウイルス対策ソフトのパターンファイル(「定義ファイル」もしくは「シグニチャ」)による技術だけでは、近年の攻撃を防ぐことが難しくなっている。そうした状況の中、標的型攻撃対策が求められるようになり、ひとつの市場と見なされるまでに急成長している。現在、成長基調にある「標的型攻撃対策市場」の先駆者は、FireEye, Inc.(以下、FireEye)であり圧倒的なシェアを占めて先発者としての優位性を発揮しつつある。これまで、トレンドマイクロは、常に新しい技術を研究し他社に先んじて製品を市場に投入することでウイルス対策市場をリードしてきたが、標的型攻撃対策市場においては後発となっており劣勢を強いられている。
詳細情報
ケースID | 15-1032 |
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登録 | 2015 |
業界 | ソフトウェア業 |
分析領域 | マーケティング |
ページ数 | 23 |
言語 | Japanese |
ティーチングノート | あり |