先日、娘の小学校の「親子交流会」に参加し、子どもたちと一緒に鬼ごっこをして遊びました。その中で急に、警察官役の子どもが登場し、さらには裁判官まで登場して、鬼ごっこだったはずの遊びが裁判劇に早変わりしました。いかにも子どもらしい遊びの転換でした。
同じ名古屋商科大学の岩澤先生に勧められて読んだ『遊ぶヴィゴツキー』は、こうした遊びの中でのパフォーマンスこそが、発達の原動力となっていることを指摘した、重要な本でした。周りの人の行動に合わせながら、すこしだけ背伸びをする。「頭一つの背伸び」によって子どもたちは成長していくのです。
さきほどの子ども裁判ごっこの例で言えば、裁判のことを知らなくても、そこに合わせていくことで、裁判とはどんなことなのかを学んでいくのです。裁判のルールが明示されていなくても、関係性の中で学んでいくのです。
そしてこれは、子どもだけに限りません。大人もまた、この「頭一つの背伸び」によって成長します。仕事も一段落し、日常業務に慣れてくるとこうした背伸びが必要なくなってきます。そのとき、成長という点では停滞が起こります。その停滞を打破するのがMBAであり、授業においては未知の領域への背伸び、というよりも跳躍が求められます。勇気のいることですが、これなくして成長はありません。
そして重要なことは、このパフォーマンスを「遊び」と表現している点です。遊びだからこそ、大胆な背伸びができる。真剣な議論の中にも、いい意味で「遊び」が潜んでいる。ワクワクしながら、自分自身の新たな可能性を発見する。そんな意味合いを、この書籍のタイトルから受け取りました。そしてMBAもまさに「遊ぶMBA」なのです。
MBAのケーススタディについて、「しょせん現実とは異なる」といった批判もあります。たしかにケースに書かれている情報は現実を100%表現できていませんし、間違った答えを導き出しても現実的な損失を被るわけではありません。しかし、だからこそそこには真剣な遊びが生まれ、大胆な背伸びが可能になるのです。
そしてこの背伸びは、イノベーションとも密接な関係があるのですが、それはまた別の機会に。