この4月に名古屋商科大学ビジネススクールに着任した竹内伸一です。私にとって今年は名古屋での特別な新年度なのですが、MBA学生の皆さんにとってはそれ以上に特別な時間のはじまりになりますね。
皆さんにとって、名古屋商科大学ビジネススクールで学ぶということは、日常の職務の中では成し得ない、特別で、非日常的なことであり、そこには「新しい学び」という前提が置かれていると推測します。これまでのビジネス経験や実績の多寡には個人差があるにしても、多くの皆さんは「これまでにやるべきことはやってきた」という自負もお持ちのはずなので、「学びの上乗せ」と加算的に発想すること自体は自然であり、理に適ったことでもあります。
そんな皆さんへの私からのメッセージは、「ビジネススクールでの学びは、これまでに触れてきているのに、その価値が十分に分からずにいたことがらの、その真の価値を発見する機会にもなるかもしれない」ということです。例えばですが、私自身の記憶から即座に思いつくのは「経済学」です。
非加算的に「償うように」学ぶ
私自身は教育学部の出身で経済学とはそもそも無縁で、30代後半になって入学したビジネススクールで経済学研究者の先生方のクラスを履修して、経済学がもつ卓越した「道具性」にやっと気づくことになりました。経済学は社会の営みを理解したり構想したりする際のきわめて有能な道具であり、経済学は「社会で賢明に生きるための基本的な素養のひとつ」なのだと確信できるようにもなりました。
もっとも、ビジネススクールであれば、経済学という学問に正面から立ち向かうのではないのですが、経済学が専門の先生からは、ディスカッション授業のコメントの隅々に「経済学」がにじみ出てくるのです。そんなコメントの数々を丁寧に重ね合わせていくと、ついにこの私にも見えてきたのです、経済学の価値と強みが。
不変の価値をもつものほど、その真の価値理解には時間がかかるのものなのかもしれません。ですが、皆さんはMBAプログラムへのチャレンジを通して「大量なる時間資源の投入」という意思決定をしたのですから、時間さえかければ出会えるものには、この際、出会っておくべきです。皆さんには、この4月からのMBAプログラムの履修を新たな叡智の獲得機会とするだけでなく、今まで見えてこなかったもの、見落としていたものを創造的にすくい上げていく機会にもしていただきたいと願ってやみません。
以上、非加算的に、過去を「償うように」学ぶというのも捨てたものではない、というお話でした。