オンラインビジネススクールの潮流
2015年からgaccoというサイトでオンラインでビジネススクールを体験するコースの開講をしています。昨年は、数千人の受講生を集めて講義をしました。これは、JMOOC(Japan Massive Open Online Courses)という団体というかコンセプトというか、要はオンラインで無料で多くの方に学習して貰うという目的の動きです。
このような取り組みは欧米ではかなり普及してきていて、日本でも昨年から本格化し、大学・大学院を含む多くの教育機関が参加しています。ビジネススクールでも主流とは言わないまでも、オンライン講義は時代の潮流になってきていて、今後日本のビジネススクールも本格的にオンライン講義に取り組まれると思います。
JMOOCはいわば公共の教育の場で、しかも無料が前提ですので、各教育機関も自前の取り組み(もちろん有償が前提)の予行演習、もしくは、マーケティングの一環として取り組んでいるようです。
オンライン講義へ挑戦
筆者はコースの中で、前回のコラムで実況中継しましたStrategic Thinkingを担当しました。どこまでオンラインでケース討議ができるのか?へのチャレンジでした。そこで感じたオンライン講義の良さと限界の話をします。JMOOCは無料という特殊性があるので、すべてのオンライン講義に適用ができない部分も多いですが、共通項もありますので聞いてください。
まず、苦労したのが教材です。JMOOCは無料なので、ビジネススクールが通常使用しているケースは版権の関係で使えません。なので、やむなく自分の人生の6つの転換点をショートケースにしました。筆者は坂本龍馬が大好きなので、主人公は坂本という名前にしたのですが、実際は筆者の実体験です。
次にビデオ撮影です。スタジオで一人芝居で収録しました。学生がいない中で、かつ無反応な中で、熱い講義をしなければならず、だいぶ苦労しました。このビデオがまずオンラインで流されます。流される期間は1週間に限定されます。これを視聴した受講生は、ビデオで示された課題に対して掲示板に自分の回答をアップします。それを見て他の受講生がコメントし、擬似的な討議が展開されます。また、最終試験と言うものもあり、同じようにビデオを見て最終課題の回答を掲示板にアップします。それを、3人の他の受講生が採点します。その結果で、修了証が授与されるという仕組みです。
MBA教育の普及を担う為には
JMOOCの仕組みは、実際は双方向でなく擬似的に双方向性を生み出しているので、議論がやや不活発になり易い部分もありますが、今後このリアルタイムの双方向性がスムーズに運営されることも求められます。
そのためには、越えなければならない課題もたくさんあります。
- 学生対学生のコミュニケーションをどうやってスムーズに実現できるのか。
- ケース講義の熱気がオンラインでどう醸成できるのか。
- ネット技術サイド(熱気を伝える技術イノベーションが必要です)
- 教官側の講義スキル(オンライン用のスキルがある気がします)
- 学生側の満足度(オンラインといえど高い授業料を払います)
ですが、オンライン講義の実現によって多くのMBA学生が生まれることは、世界全体の進歩です。特に、MBA教育がまだそれほど普及していない日本ではより重要な課題です。その進歩の一翼を担えればと思っています。