今回は授業の様子を実況中継的にお伝えします。
テーマにした授業はMBAの新入生が入学して最初に受講する授業で、MBAの基礎思考である戦略的思考が身につきます。受講生になった気分で読んでみてください。
Strategic Thinkingの1日目
朝9時前。
授業は10時からだというのに、名古屋キャンパスのエントランス(9時の開門される)にはもう学生の列ができている。前日徹夜に近い準備をしているのに、この早さは何だ?答えはひとつ。教室で良い席を確保する為だ。良い席とは、手を挙げた時に先生の目に付きやすい席を指す。端っこの席だと、肝心な時に先生に指名してもらえず、事前の授業準備が無駄になる。
開門された。どっと学生が館内に流れ込み、教室に向かう。バーゲン会場みたいだ。みな、自分の席を確保しほっと一息付いている。が、9時20分から授業に先立つグループセッションがもう始まる。指定されたグループに入り、自分の準備したことをお互いに話しあう。授業に向けたウォームアップだ。自分の準備に足りなさに、早くも自信を失う学生もいる。先輩と新入生の混合クラスなので、先輩は半年以上のアドバンテージがあるが、先輩らしく後輩に見せる為に、これまで以上に準備をしてきている。新入生半分近くは40代、50代の管理職で会社では大きな顔ができるが、ここでは新入社員と同じ境遇だ。右も左も判らない。
10時になった。
いよいよ授業が始まる。何の前置きもなく、いきなり教官から質問が飛んでくる。
「うちの会社には戦略がないんだよね。って言っている人多いけど、戦略がないってどういう状態なの?」
こんな質問、ケースクエスチョンにはなかったぞ!と思っているうちに、さっと周りの手が挙がる。半分以上手を挙げているぞ。授業の展開が読めない。焦る。一通りの意見が出た段階で、教官が「戦略とは何か?」を説明し始める。「戦略とは競争と同義語である。戦略がなければ競争には勝てない。競争がなければ戦略は必要ない。」なるほどと思う。
ポーターの競争戦略理論のベース説明が終わると、教官が「このコースは30%の人が単位を落とします。50人のクラスなんで15人です。評価は2つ。クラスの発言点が50%。各回と最終のレポートで50%。クラス発言は量の評価と質の評価。量は、とにかく回数を発言すれば加点させる。回数が少なくても質の良い発言は高く加点される。このクラスには出席点はない。出席していても、発言ゼロだった欠席と同じ。だから、各Session(3時間)で最低1回は発言しないと、やばいです。」と宣言した。これが発言プレッシャーか。よっしゃ、発言したるで。
こうして、クラス討議は始まった。任天堂はファミコンでなぜ成功したのか?色々な発言が出てくる。文殊の知恵だ。「ハードの価格を安くしたから」「なぜハードが安いと成功するのか?」「買うのに手頃な値段だから」「消費者はそれで良いけど、任天堂はなぜ損をしてまで安くするのか?」「台数が普及すればソフトで儲けて回収できるから」「理屈はそうだが、任天堂はそのリスクを丸抱えにして勝つ成算はあったのか?」「相当な準備と成算があったと思う」「あなたが山内溥社長だったら本当にそんな決断の度胸あったか?」・・・
議論はどんどん深くなっていく。時間があっという間に過ぎていく。自分も発言しなくっちゃ。思い切って手を挙げる。教官が指してくれた。よし発言デビューだ!「ハードとソフトはファミコンビジネスの両輪です。でも、この二つを同時に普及させるには、低価格ハードでリスクを取る必要があります。それで損した分を高価格のソフトで回収する。これしか方法がなかったはずです。」「その通り。これまでの議論をまとめてくれました。ニワトリと卵がどっちが先かという典型的なジレンマです。ジレンマを打破するには誰かがリスクを取るしかない。それを山内社長が自ら取ったということですね。でも、この決断の重さを皆に感じて欲しい。」さすが教官。いいまとめするね。そして、自分の発言も評価された。幸先いいぞ!
夕方4時40分。
今日の授業が終わった。頭が疲れた。いままで使っていなかった脳を久しぶりに使った感じで、爽快感はある。達成感もある。が、眠い。明日の準備がある。早く帰って仮眠してから予習に取り組んだ方が良さそうだ。