EMBA(Executive MBA)を世界で初めに導入したのはシカゴ大学ビジネススクールで、1943年に実務経験豊富な社会人を対象としたMBAプログラムをExecutive MBA(以下、「EMBA」)としてスタートさせました。以来、EMBAという学位は欧米においてはMBAと区別して用いられることが多く、米国ではMBA入学が社会人経験を必要としないのに対し、EMBAは社会人経験を必須条件とするため、EMBAは社会人MBAという認識が定着しています。したがって、日本人が「エグゼクティブ」という単語から連想する「役員」といったニュアンスとは少し異なります。因みに、EMBAプログラム修了者の最終学歴はMBAもしくはEMBAのどちらを使用しても差し支えありません。
EMBAとMBAの具体的な違いは?
MBAとEMBAを区別しなければならない理由は明確で、ビジネススクールに通う社会人といっても、大学を卒業したばかりの20代のジュニア層、30代・40代・50代といった企業の中核を担うミドル層から60代・70代のシニア層まで幅広くおられます。そこで、MBAはジュニア層とEMBAはミドル層を主な対象として受講生を募集しているのです。ミドル=エグゼクティブという構図は日本ではイメージしづらいのですが、部下を持つ立場となる世代を対象としていると考えていただければ、良いかと思います。
このように対象とする受講者の実務経験の長さに応じて「EMBA」と「MBA」プログラムとに分類されます。両者の間に明確/厳密な定義は存在しませんが、MBAは実務経験3年以上を参加資格とする事が通例で、EMBAは実務経験15年程度の社会人(中核ミドル)向けのプログラムを指すことが多く、欧米社会で40代の社会人が「最近、MBAを取得した」と話すと、年齢的な少し違和感がでてきます。
ちなみに、2003年に日本で初めてExecutive MBAを立ち上げた名古屋商科大学経営大学院の受講生の平均年齢は42歳で実務経験は平均18年となります。国内でEMBAを提供しているビジネススクールも数校あるようですが、国際的に認証された学位でない独自方式の場合や英文学位がMBAのままの学校もありますので、ご注意ください。
EMBAに関する認証団体
「MBAとは何か」と同様に「EMBAとは何か」を考える上で重要なのがその認証団体の存在です。EMBAを認定する団体としては、AACSB(国際認証団体)の協力の元で誕生したExecutive MBA Council(EMBAC)という国際協議会があり、世界中のビジネススクールの「EMBA」プログラムのカリキュラムを認定しています。すでに330プログラム(2015/11時点)が認証されており、日本国内では名古屋商科大学のExecutive MBAのみがEMBAとして認定されています。このように、MBAの世界では独自基準・独自判断で活動するよりも国際的な第三者による認証を受けることが重要であり、規模よりも品質を保証する姿勢が求められています。
MBA | EMBA | |
---|---|---|
正式名称 | Master of Business Administration | Executive MBA |
推奨実務経験 | 3年以上 | 15年程度 |
育成する人材 | 課題発見型人材 | 課題解決型人材 |
取得すべき能力 | 専門領域における企画/提案力 | 全社的視点に基づく管理/経営力 |
コンセプト | イノベーション | マネジメント |
教育手法 | クリエイティブ・シンキング | クリティカル・シンキング |
学位(和文) | 修士(経営学) | 修士(経営学) |
国際認定協会 | AMBA(Association of MBAs) | EMBAC(Executive MBA Council) |