筆者がハーバード・ビジネススクールでMBAを学んだのは、もう27年も前のことになります。34歳の時でした。自分の一生の中で一番勉強しました。もう一度あの2年間に戻れと言われても、絶対に戻りたくありません。それくらい過酷でした。そして今、筆者はMBAを教えています。すべての学生は筆者が体験したのと同じくらい時間をかけて勉強しています。
そんな辛い道を選ぶ目的は何か?
まず、MBAの目的でパッと思い浮かぶのは資格としての価値です。企業が上場すると社会的な信用を得られて、人・物・金の調達が有利に実行できます。MBAもそれと同じで、その資格を持っていれば、ビジネスの世界での信用力が増します。筆者も実際の海外でのビジネスでは、この資格を持っているゆえに、いちいち自分の説明をする前に一定の信用を得られて、随分と得をしました。また、欧米ではこの資格がないと管理職に登用されない企業が多く、より良い給料を求めるのであれば、この資格は必須に近いものがあります。
一方で、日本ではこの資格としての価値はどのくらいあるのでしょうか?外資参入、もしくは日本企業の国際化が進んでいる製薬業界では、このMBA資格の価値は大いに認められていて、多くの方がMBAにチャレンジしています。外資系企業では他の業界でもMBA価値は大きいです。ですが、残念ながら多くの日本企業はMBA資格の価値に対して、否定的、というよりも怖れを抱いています。MBAをもつこと=転職予備軍といった感覚が強く、自分の会社内で、「MBA勉強してます!」なんて言ったら、とたんに冷や飯食いポストへ、といった実例もよく学生からは聞きます。日本の企業風土ってとても情けないです。日本の経済が停滞しているのは、こういった風土に代表されていると思っています。
ここから本論です。筆者はMBAを卒業してもう長いです。MBAで勉強したことなんか、ほとんど忘れてしまっています。じゃ、何が残っているのか?それは、自分に対する自信です。リーダーとしての経験をMBAで積みました。誰にも負けない努力で勉強しました。卒業した自分には自信が満ち溢れています。不思議なもので、自信を持った人間は魅力的に見えます。そうすると、上司は自分により高いレベルの仕事を出してくれる。それによって、自分の能力加速度的にアップする。得意先でも魅力的な人間は人脈が広がります。多くの人に出会え、その信頼を受けます。信頼を受ければ自分の商売はどんどん広がります。能力もさらにアップしていきます。結果、望めば良い転職も可能になります。
筆者の人生を振り返ってみると、この好循環の連続でした。ですので、筆者のビジネス人生のスタートラインはMBAにありました。そこからの好循環は、もちろん努力と運の結果でもありますが、MBAがなかったら筆者はつまらない人生を送っていたと思います。自分の人生に悔いを残したくない。完全燃焼していつも仕事していたい。自分の能力を継続して磨いていきたい。そう思っている方は、MBA適格者です。「自分の魅力度をアップする」これがMBAの究極の目的と思っています。