「日本のMBAと海外のMBAの違いって何?」と良く聞かれます。筆者のビジネススクールでの学生経験と、講師経験のふたつから違いを考えてみたいと思います。
まず、外国人学生はとても議論が得意です。アメリカ映画でよく口論している情景が描かれますが、丁々発止といった感じで、議論する喜びに溢れていています。日本の映画は、ボソボソと独り言で映画の主人公が描かれています。これは、ビジネス世界でも同じですね。議論を楽しむのが外国人、できるだけ議論をしないで物事を納めたいのが日本人。そんな違いが一般的にはあります。これは、文化といえば文化なのですが、それ以前に幼児からの教育の違いだと思っています。外国人は小さい頃からハイハイ手を挙げて教室で議論しています。ところが、日本の教育は暗記です。暗記だったら議論する必要がありません。これが、6歳から22歳まで続いた結果、文化性になってしまったのが現実です。
常に発言しなくてはならないのがMBAの教室
ところが、MBAの教室では議論なしには講義が成り立ちません。日本人も否応なく欧米流の議論の渦に巻き込まれます。日本人だけのクラスでも同じです。講義で手を挙げて発言しない学生は、欠席と同じと評価されてしまいます。どのビジネススクールでも、成績の評価基準は50%がクラス発言点。残りの50%が試験もしくはレポートというのが相場です。つまり、発言点が弱いと確実に単位を落とします。落とした単位が積もれば卒業できません。ですので、MBA学生は”常に教室で発言しないといけない”という切迫感の下で講義準備をして、講義で発言しています。
正直、これは日本人学生には、はじめは相当辛いものがあります。でも、慣れてくるにつれて度胸もついてくるし、発言する喜び・達成感みたいなものを感じる境地になり、誰もが半年もすれば見違えるような外国人的MBA生に成長します。この境地になると、日本人学生は外国人学生に比べて大いにアドバンテージを享受できます。
それは、日本人学生の方がビジネス経験が豊かだということです。外国人学生はMBAは資格という概念がありますので、だいたい20歳代でMBAにやってきます。若くしてMBAを取って、管理職に若くしてなろうという意図です。逆にビジネス経験は浅いです。日本人はそういった意識ではなく、今の仕事に限界を感じてなんとか自分の将来を変えたいと思ってMBAにきます。その人生タイミングには個人差があって、20代後半から60代まで幅広いです。つまり、相当ビジネス経験を積んだ上でMBAにきています。このビジネス経験の差は、当然教室で出てきます。外国人だけのクラスですと、だいたい出てくる発言は金太郎飴的です。日本人だけのクラスですと、発言はまさに百花繚乱で、講師から言えば料理に困る発言が頻発します。学生の学びのどちらが大きいかと言えば、百花繚乱型が金太郎飴型を上回るのは自明です。
一つだけ残念なこと。それは、日本人の英語力の欠如です。筆者が教えている学校では、外国人・日本人の混成の英語クラスがあります。外国人は日本人学生と議論したくて、わざわざ日本まで留学して学んでいます。でも、日本人学生は僅かしかいません。日本にいながら外国人学生と討議できるチャンスがあるのですが、チャレンジしてきません。理由は簡単、英語がダメだからです。MBAを目指すものは、英語を身につけよ!