3月11日に、本学で社会人学び直しシンポジウム 〜輝く女性のキャリア形成〜というイベントが開催され、男女問わず、学び直しや女性のキャリアについて関心のある多くの方々にご参加いただきました。
私は、この中でパネル・ディスカッションの司会をさせていただきました。パネラーは、谷本有香さん(Forbes Japan)、中村真紀さん(西友/若菜)、石塚大祐さん(瀬戸信用金庫)、小室銘子さん(パーソル総合研究所)、中根かつみさん(カラータクト・ブランディング、NUCB女性の会会長)、中村浩さん(アルペン)、北原康富先生(名古屋商科大学)の総勢7名でした。
みなさんMBA等の学び直しののち、本当に成功されている方々であり、そうした体験談は貴重なものでしたし、企業側の方々も女性の活躍にさまざまな工夫をしておられるお話が参考になりました。
しかし、より興味深かったのは、多くの女性のパネラーが事前のアンケートで「学び直しに、殆ど苦労はなかった」と答えたことです。
現在学んでいる学生の方々に聞くと、男女問わず、仕事と学修の時間配分、家庭のこと、子供のことなどさまざまな悩みを抱えています。なのに、成功した皆さんからは、そうしたお答えがあまり多くありませんでした。
このギャップは何なのでしょうか。苦労話は言いにくかったのかもしれませんが、もしかすると、皆さんある程度苦労はしたものの、その後の成功体験で、"帳消し"になっているのではないでしょうか。
記憶は容易に置き換え、書き換えられるということはさまざまな研究で知られています。例えば、2001年9月11日の同時多発テロ事件の時に何をしていたか、という記憶を訪ねる調査でも、直後の答えと3年後、5年後の答えは徐々に整合しなくなり、10年後には半数以上の人々で異なることを答えたそうです。
これは、ある出来事を思い出すたびに、その後の体験や、周囲から得られた情報によって記憶の"書き換え"が起こるためとされています。どんな成功者も、たいへんな思いはしているのでしょうが、それを上回る達成感で記憶は変わっていくようです。
今、勉強で苦しいと感じている皆さん、大変そうだからとMBA取得をためらっている皆さん、「喉元過ぎれば・・・」と言われるがごとく、困難な記憶はその後の成果で置き換えられます。ぜひ一歩踏ん張って乗り越えていただきたいと思います。