ミンツバークはその著書「Managers not MBAs(2004)」においてマネジメントにはアート(直感)、サイエンス(科学)、クラフト(経験)の3つが必要で、MBA教育はサイエンスに偏りすぎだと批判しました。米国ではMBA入学に実務経験が必要とされないことが多く、学部卒業と同時にMBA進学することも可能です。そのため実務経験の部分がMBA取得時点で欠如する傾向にあるのも頷けます。
では本当にマネジメントにサイエンス以外の部分が必要なのか?この部分の謎は彼の別の著書「戦略サファリ」から読み解けます。ミンツバーグはこの著書において経営戦略の各学派の特徴を10のカテゴリーに分類して、動物に例えながらそれらの功績を批評していくのです。まさに経営学版の動物占いです。因みにこの分類では私は「クジャク」らしいです、皆さんの戦略スタイルはどの動物でしょうか?
経営戦略を構成する10の学派
経営学派 | 動物 | 代表的な経営学者 | 戦略コンセプト |
デザイン学派 | クモ | セルズニック | 経営者が戦略策定すべき |
プランニング学派 | リス | アンゾフ | 経営者より優秀な戦略プランナーが必要 |
ポジショニング学派 | 水牛 | ポーター | 分析して棲み分ける事が戦略 |
アントレプレナー学派 | 狼 | シュンペータ | 戦略はリーダーによる思考過程 |
コグニティブ学派 | フクロウ | サイモン&マーチ | 戦略とは個人の認知プロセス |
ラーニング学派 | 猿 | ハメル&プラハラド | 戦略より組織による学習が重要 |
パワー学派 | ライオン | アストリー | 影響力を持つこと自体が戦略 |
カルチャー学派 | 孔雀 | バーニー&クリステンセン | 組織文化こそが競争力の源泉 |
エンバイラメント学派 | 駝鳥 | ハナン&フリーマン | 環境に適応出来る組織が生残る |
コンフィギュレーション学派 | カメレオン | チャンドラー&ミンツバーグ | 状況に応じて戦略を使い分ける |
ミンツバーグが属する最後の「コンフィギュレーション学派」の考え方は、組織は置かれた環境(競争状態、技術革新、不確実性など)に応じて、それ以外の9学派の戦略スタイルを使い分けるべきというスタンス。まさにいいとこ取りの変化自在な「カメレオン」ですが、それってあり?という感じも否めません。こうして万能な経営戦略など「ない」と悟ったミンツバーグだからこそ、MBA教育で戦略を学ぶだけでは不十分で、それを使い分けるための「感覚的」かつ「実務的」な感覚を磨く必要性を「Managers not MBAs」として主張したかったのだと私は理解しています。