MBA教育の限界に挑む
ここ数年の世界のビジネススクールでの最大の話題は、従来のビジネススクールが目指してきた左脳型の課題解決能力の限界に挑むということ、すなわち「イノベーション」の視点をいかに教育に取り入れるかであります。複数の選択肢から批判的視点で最善の案に絞るという「クリティカル・シンキング」は有名ですが、現在は示された選択肢以外の新たな案を創造する「クリエイティブ・シンキング」がホットな話題です。有名なのはスタンフォード・ビジネススクールのデザインスクールですが、従来のビジネススクールにも新たな科目やプログラムを立ち上げて、MBA教育の限界を打ち破ろうとする動きが出ています。
「課題解決型(左脳)」の教育手法を採用するビジネススクールに対して「課題発見型(右脳)」の教育手法を実践するデザインスクールは、カリキュラム、教授法など多くの点において異なってきます。例えば、マーケティングを例にご紹介しますと、左脳型の解決方法では、製品開発にあたってアンケート調査を実施し、統計的に意味のありそうな消費者行動を「分析」することを重視する傾向にあります。その一方で、右脳型の解決方法は、製品開発にあたって店舗内での顧客の行動を徹底的に「観察」し、言葉には現れにくいニーズを発見することを重視します。このように、マーケティングにおいてもアプローチが大きく異ることになることがお分かり頂けるかと思いますし、それ以外の領域においても同様のカリキュラムが存在します。以下は本ビジネススクールのカリキュラムを参考に作成した開講科目の一例ですが、世界中のビジネススクールで同様の動きが出ています。
テーマ | 課題解決アプローチ | 課題発見アプローチ |
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思考方法 | Critical Thinking | Creative Thinking |
マーケティング | Marketing Strategy | Business Ethnography |
国際経営 | Global Management | Learn from the World |
経営戦略 | Strategic Management | Business Model Design |
金融戦略 | Investment Simulation | Financial Market Ethnography |
人材管理 | Human Resource Management | Innovation of Learning Organization |