国内MBAが大きく動き出したのは、文部科学省によって「学校教育法」が改正となり「専門職大学院制度」が誕生した2003年といえるでしょう(制度改正は2002年11月)。この制度の下で多くの経営系の大学院を有する大学が社会人を対象とした専門職大学院を開始し、自らを「ビジネススクール」を標榜するようになりました。しかしながら、当然のことながら100年近くの歴史を有する諸外国のMBAプログラムからみると、その教育内容の実態は従来の研究者育成型の大学院と代り映えのない存在でした。すなわち、論文や研究書を輪読する研究型の講義を中心とする教育手法で、社会人の求める「より実践的な」事例中心のマネジメント教育が行われていなかったのです。
2010年代になると、国内では教授サイドでのMBA教育への理解が進み、実務家教員のみならず学術教員による「ケースメソッド」教育を採用する講義が増えてきましたが、特定の教員・科目・学問領域のみで採用されることが多く、欧米のようにプログラム全体を参加型のディスカッション講義で進行するビジネススクールは、国際認証を受けたビジネススクールなどに限られています。
2020年代になると、ビジネススクールの競争領域が「インパクト」「イノベーション」「エンゲージメント」に移行します。これは国際認証機関AACSBが2014年に定めた基準であり、既に世界中のMBA教育がこの三軸での競争を意識しています。大学のブランドにあぐらをかいて意識改革が進まず「実務家教育」の是非を議論している国内ビジネススクールがあるとすれば、社会人の選択肢から消滅することでしょう。
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