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MBA取得の利点や難易度など

令和になり国内MBAの世界も様変わりしてきました。そこでMBAとは何かを、現在の視点で多面的に検証していきたいと思います。令和のMBA事情の前に「平成」においてMBAに何があったのか振り返っておきましょう。平成元年といえば1989年、まだビジネススクールと呼べる存在の学校は数えるほど。MBA=社会人教育という概念はまだ定着しておらず、専門職大学院という教育制度が確立されて、伝統的な「修士」と区別した修士(専門職)の登場によって、多くの大学がMBA教育に参入することになります。

私が知る限りで一時期は80近い大学院が100ものマネジメントに関連した教育課程を国内で提供していました。その結果、毎年5,000人ものMBAが誕生しているという推計もあるほど。昭和がMBAの「誕生期」であったとすれば、平成はMBAの「成長期」といえるでしょう、この成長期に国際認証を取得した大学は以下の通りとなります。このコラムでは国内MBAが次のステージ(安定期?)を迎えるにあたり、検討すべきポイントを列挙しておきます。

国内MBAのAACSB取得状況

  1. 2000年 慶應義塾大学 - 大学院経営管理研究科
  2. 2005年 名古屋商科大学
  3. 2016年 立命館アジア太平洋大学
  4. 2018年 国際大学(大学院大学)
  5. 2020年 早稲田大学 - 大学院経営管理研究科

まず一体何がMBAなのか?

MBAとは何か《令和版》ということで、まずあまり知られていない点からご紹介しましょう。文科省の学位規定にMBAという三文字は存在せず、加えて「経営学修士」という学位も存在しません。日本の学位では原則として以下のどちらかです。国内の主要MBAスクールの学位を調べてみましたが、ほぼこの2パターンに集約され、英語に翻訳するとMaster of Business Administration、としているのです。したがって厳密には日本で「MBA」なる学位を認証する組織は存在しないので、国際的なMBAの認証を受けることが必須です。

  • 修士(経営学)
  • 経営管理修士(専門職)


国際認証とランキング

Accreditation & Ranking

国際認証というMBAの評価軸

国内で国際認証を取得した大学もこの20年間で徐々に増えてきました。メジャーな国際認証となる以下を継続取得している大学院は5校(執筆時点)となり、学部と大学院で同時に取得しているのは2校。旧来の「商学研究科」とは別に「経営管理研究科」を別に設定して、独立組織として認証を取得したMBAが2校。そして大学院大学として1校。いずれも私立大学ですが、実は国立大学も2校準備中です。認証団体ごとに審査重視ポイントが異なりますが、およそ世界の3-5%のMBAがこの国際認証を継続して取得しています。ハーバード、MIT、スタンフォード、など世界のトップビジネススクールも国際認証を取得しているのはなぜか?少し考えてみるのも良いでしょう。

  • AACSB International(教育品質)
  • Association of MBAs(MBA教育)
  • EQUIS(国際活動)

専門職大学院と大学院の違い

因みに専門職大学院は日本独自の教育制度で2000年以降に誕生したMBA課程は「専門職」というワードが付与されます。本学は1990年発足なので伝統的な、修士(経営学)です。もともと専門職大学院とはロースクールのための教育制度として誕生した新たな大学院制度。それを「経営学」にも応用したものであり、「専門職」人材を育成する修士課程に特化しているのが専門職大学院の大きな特徴です。MBA課程を、専門職大学院あるいは大学院のどちらで実施しているかは、それぞれの大学の歴史的背景の結果なので、志願者は気にしない方が良いと思います。

MBAの価値の測り方

国内でもMBAは教育投資の一つとして考えられる側面が強まってきました。実際にMBA取得後の年収増の傾向は強く20-30%の上昇は珍しくありません。背後には、社内でのプロモーションに伴う役職手当/役職賞与や業界内での転職によるキャリアアップが存在します。そして、製薬企業の場合ではMBAが昇格条件という外資系企業もあるなどMBAホルダの活躍があります。これらを数値化して、一体授業料をどれだけ早く回収できるのか?こうした費用対効果を数値化し序列化したものが「MBAランキング」と呼ばれています。要は卒業後に活躍(企業が評価)しているMBA課程のランキングです。

  • QS(年収&評価)
  • Financial Times(年収)
  • Economist(GMAT重視)

ここ数年ですが、ようやく国内のMBAスクールもQSランキングに登場するようになってきました。今後は国内MBA勢もアジア内での順位が主戦場になってくるでしょう。因みにアジアNo1のMBAはQSでは「INSEAD」です。INSEADの英語表記の正式名称は「European Institute of Business Administration」で欧州経営大学院、本拠地はフランスのパリ郊外のフォンテーヌブローで世界Top3に入るMBAを提供する存在、そのINSEADが2000年からシンガポールでMBAを開始しているのです。また、アジア拠点の大学のNo1はNUSでこれまたシンガポール、シンガポールは競合がひしめき合っています。

結局MBAは高いのか安いのか?

MBAを教育「投資」と考えれば、早く始めれば始めるほど割安です。そして厚生労働省の「教育訓練給付金制度」が整備された今、授業料の50%近い金額が補助される環境になっています。外部環境が変化しやすい今、中長期的なキャリアを考えるとMBAの価値は高まっていると思います。

  • 一般教育訓練給付金(1998創設)
  • 専門実践教育訓練給付金(2014新設、2018拡充)

入試関連

Admission

MBAは学位課程ですので大学設置基準に則り「入学試験」なるものが存在します。と同時に入試を必要としない教育課程は前者の学位課程を「本科」と呼び、後者は「科目等履修」もしくは「単科」と呼び区別することが求められます。

MBA入学の難易度

実は近年、MBAの入試選抜から筆記試験が消滅し始めています。COVID19の影響をきっかけに面接のみの選抜に切り替わり始めています。筆記を課す場合でも「ケース試験」といった実際の授業スタイルで実施し、伝統的な筆記試験はMBAから一時的になくなりました。海外MBAの場合であればGMATスコアと面接です。GMATは論理的思考力を測定するもので検定料は250$です。本題と関係ないですが、このGMATを運営している「GMAC」という会社が「mba.com」というドメインを所有しているのです、気合と執念を感じますね。

入学の難易度に話を戻しますが、令和時代のMBA選抜が「面接重視」となった今、学校が重視しているのはクラスの多様性です。管理職経験、専門職(医師/弁護士)、修士/博士の既取得者、女性、外国籍、起業家、などMBAクラスの多様性を高めたいので、志願者としてはいかに自分がクラス討論に貢献できる存在なのか?をアピールすることが求められます。合格倍率は国内MBAスクールの教員との会話で聞こえてくるのは1.5-2倍です。

入学試験前に準備すること

経済紙やハーバードビジネスレビューなど意識高めのビジネス誌に日ごろから目を通しながら、自身の抱えている課題を「多面的」かつ「論理的」に対話できるようにしておくことではないでしょうか。そして、教育課程ごとに設定された教育の理念を確認しておくのは重要です、面接官の中には教育の理念との整合性を重視する教員もいます。さらに、もし時間が許せば当該MBAスクールが出版している公式書籍に目を通しておくのも良いかと思います。

消えるMBA、消えないMBA?

昨今の事情で、Zoomなどの遠隔会議システムを使用したバーチャル授業もMBAで取り入れられるようになり、ますます仕事との両立がしやすくなったMBA。ここで留意したいのが「バランス」です。過度に「仮想」により過ぎたMBAや「学術」により過ぎたMBAには少し疑問を感じます。そもそもMBAとはリーダー育成の場であり研修機関ではありません、学びを通じた生涯にわたるネットワークを構築する場ですので、何事も極端な選択をしないことをお勧めします。

  • 学術と実践
  • 仕事と学び
  • 現実と仮想

フルタイム(全日制)MBAとは何だったのか?

国内外においてフルタイムMBAの衰退というテーマで記事を見かけます。確かに、キャリアを中断せずともMBAを開始することが可能なプログラム(パートタイムMBA)は魅力的ですが、フルタイムMBAの学びの価値が下がったわけではありません。全日制のMBA教育の最大の魅力は、仕事を中断して退路を断った滞在型の学修体験 にあり、その価値を最大化させるためにもフルタイムMBAは「英語」で授業を提供して参加者の多様性を高めることが求められます。あるいはフルタイムは企業派遣(B2B)、パートタイムは個人参加(B2C)という棲み分けが理想的です。


教育課程

Academic Education

無事入学が許可されたら、単位取得と卒業課題に取り組む必要があります。単位取得は大学院および専門職大学院ともに設置基準上では「30単位」になりますが、国際通用性の観点では40から50単位が適切といえるでしょう。実際、本学の修了者の平均単位取得数は45単位です。

なぜMBA教育でケースメソッドが人気なのか?

MBAの授業は多忙な社会人が教室に集まってしかできないことに集中すべき、それが討論型の授業です。そうなると討論するうえで何か共通認識としての教材が必要になってきます。それを可能にするのが「ケース」と呼ばれる教材なのです。ケースメソッドは完璧ではないにせよ、自分一人では思いもよらない視点や視座に気づかされます。ただ、ケースを用いることで「課題解決力」を高めると思われがちですが、それは少し誤解で実際には「課題設定力」を高める効用を持っています。ケース授業では過去に発生した出来事の追体験を通じて、自分自身に置き換えた「内省」プロセスが重視されます。参加者はこの内省を通じて、今まで意識すらしていなかった視点を獲得して課題を設定もしくは課題を発見する力を修得するのです。

MBAの取得にあたり修士論文は必要なのか?

ここは難しい判断になりますが、国内の修士課程には2種類の卒業課題が存在します。修士論文は次の博士課程に進学するためには必要になってくる場合がありますが、専門職大学院は制度上、単位取得のみで卒業論文が不要なので何か物寂しさを感じます。ということで、卒業課題として何を課しているか?を比較検討してみてください。特定課題研究として特定の企業の課題に関する考察を行う取組(ケースライティング)を実施している場合、1年かけて所属している企業の課題を独自の視点で設定して考察することになります。

  • 修士論文
  • 特定課題研究

次世代MBAの展望

MBAが国内に定着する中で、農業MBA、医療MBA、といった特化型MBAへのニーズが必ずと言ってよいほど出てきますが、これらはMBA教育をミスリードしてしまいますので慎んでおいた方がよいでしょう。世界にはワインマネジメントに関する学位を提供するビジネススクールも存在しますが、これもMBAではなくMSc(Master of Science)で領域特化型の修士号となり一定のルールを保っています。

  • MSc in Wine & Spirits Management

結局のところ、MBA課程とはリーダーとして修得すべき資質を構築するコアカリキュラムであり、特定の産業に焦点を当てすぎると本来の目的を達成できなくなるのです。そこで考えられるのが「サブカリキュラム」です。要はMBAの部分はコアカリキュラムで体系的に網羅したうえで、特定の状況を想定したモジュール(複数の科目)を各MBAスクールの受講生のニーズに合わせて、オプションとして揃えるスタイルです。

想定されるサブカリキュラム

  • 医療製薬領域
  • 事業構想領域
  • 事業業承継領域
  • デジタル革新領域

MBAとEMBAで迷った場合はどうしたら良いか?

まず国内にはEMBAに関する誤解が少し残っているように感じます。EMBA(Executive MBA)とは修士号としての学位ですので、60時間もしくは120時間の履修証明(Certificate)として扱うのは学位の国際通用性として疑問が残ります。そう、あくまでMSc、MBA、およびEMBAは、大学設置基準に基づく修士号として扱い、所定の単位取得をもって学位として授与すべきものです。悩ましいのはMBAとEMBAとの違いです。説明会に参加すると恐らく、MBAは30代、EMBAは40代、あるいは、MBAは起業家養成、EMBAは管理職養成、MBAは全日制、EMBAは夜間/週末と説明されるかもしれません。それらが一般論としては正しいですが、違和感もあります。


海外ビジネススクール MBA EMBA
GMATスコア 必要 不要
実務経験 3年 10-15年
学修期間 1-2年 2年
学資支払 自費負担 会社負担

MBAとは中長期のネットワーク形成なので、実際に教室を見学しながらEMBAとMBAの相違を肌で感じて比較した方が良いと思います。言語化が困難なカルチャーがそれぞれ宿っているはずです。


  1. Executive MBA

    経営管理課程

  2. MBA

    事業構想課程

  3. MSc in Management

    国際経営課程



MBAに対する批判

Criticism of MBA

結局MBAは会社を壊したのか?

そんな過激なタイトルの書籍が2000年前半に登場しましたね、確かに多くのMBAホルダが「巨大不正事件」を主導して会社を崩壊させてしまいましたが、と同時に多くのMBAホルダーが起業して会社を創り出しているのも事実。特に近年、転職というよりも起業マインドの高い方々が、将来に向けたネットワーク構築を目的としてMBAに参加してきています。MBAのカリキュラムに事業革新、事業創出、をテーマにしたコンテンツ’が増えてきているのはそのためです。MBAといえばクリティカルシンキングでしたが、近年はデザインシンキングが人気科目となっているのです。

  • クリティカルシンキング
  • デザインシンキング

結論として日本人にMBAは不要だったのか?

MBA教育の批判を表現する言葉として、Management By Analysis(MBA)という揶揄があります。教育カリキュラムが科学(サイエンス)という名の分析に終始していて、経験や創造性といった要素をないがしろにしているという批判です。統計的な優位水準に裏付けられた科学を好む研究者はビジネスに再現性を信じるが、生き物としての現実社会に再現性を求めることなど無意味。バックミラーを見ながら高速道路を運転すれば事故をするのは当然という主張です。そう考えると、社外取締役に就任している教員が一体何人いるか?は重要なポイントとなってくるでしょう。

MBAスクールはバブルから何を学んだのか?

国際認証団体はMBA教育が繰り返してきた過ちを認め、拝金主義とも揶揄されたファイナンス偏重のカリキュラムから、企業倫理、ガバナンス、サステイナビリティをキーワードにしたカリキュラムを充実させることを求めています。これらは国際認証でも重視されるポイントで特定の科目や特定の教員で担保するのではなく、カリキュラム全体で担保することが求められているのです。


MBAとは何か?

About MBA


2年間の学びで「リーダー」と呼ばれる人材を育成するにはMBAと呼ばれる教育は不完全なシステムかもしれません。しかしながら、この世に完璧な教育は存在しません、それは2-3年間の法科大学院や6年間の医学教育も同じこと。卒業してからがスタートラインであり実践して失敗ながら学び続ける努力は欠かせません。そこで現実問題としてMBA教育が追及すべきものは何か?を最後にご紹介しておきましょう。

MBAの面接でよく「経営の知識」や「経営のスキル」というキーワードが志望動機として登場します。「知識」を伝達する場としてはコスパは悪いですし独学でも可能です、また「スキル」を高めることは大事ですが緊張感あるフィードバック(上司や顧客からの反応)に欠けるという批判は否定できません。MBA教育とはリーダーとしての姿勢「Attitude」を高める場と考えてみてください。MBAとはリーダーとしての姿勢を修得し、幅広い人脈を構築する場です。

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